編集委員・伊藤智章
「先の戦災被害の救済の議論も全くないまま、次の戦争への道を走り始めている。このままでは、また切り捨てられてしまう」
東京大空襲で母と弟2人を失った千葉市の河合節子さん(83)は軍事優先の「国防議論」をハラハラしながらみている。政府は16日、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を盛り込んだ安保関連3文書を閣議決定した。
政府は戦後、旧軍人軍属に恩給などで延べ60兆円を支給した。だが、空襲など戦災被害を受けた民間人は被爆者らを除き、救済の対象とされてこなかった。
河合さんら遺族らが空襲被害を訴えて国家賠償を求めた訴訟はこれまで、東京、大阪、名古屋で起こされたが、いずれも敗訴した。その際、国が主張してきたのは「戦争という非常事態下、身体や財産の被害は、国民が等しく我慢しなければならない」という「受忍論」だった。
河合さんは「次の戦争で私と同じ目に遭う。それでもいいのか。国民は気付いてほしい」と嘆く。
実際、武力攻撃を受けた場合の行政の役割を定める現行の国民保護法には民間被害の補償の文言はない。
同法を所管する内閣官房副長…
安保3文書・防衛費増額
外交・防衛政策の基本方針「国家安全保障戦略」など3つの文書を改定は、日本の安全保障政策の一大転機となりそうです。多角的にお伝えします。[記事一覧へ]
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル