台風15号の影響で大規模な断水が続いている静岡市清水区で27日、県の工業用水などを活用し、一部地域で生活用水の供給が始まった。ただ、完全復旧の見通しは立たず、日常生活に支障を来している。そんななか、県外から物資が続々と届くなど、支援の輪が広がっている。
清水区の和菓子屋「田子の月・清水店」では27日、全国から寄せられた飲料水のペットボトルが駐車場に山積みにされていた。区民が次々と訪れ、2リットルボトル6本が入った1ケースが無償で配られた。自転車で約30分かけて来た同区巴町の男性(70)は「本当に助かる。まだ暑いし、飲み水は命の綱。数日はもちそう」と笑顔を見せた。
店によると、断水が始まった直後にツイッターで支援物資の協力を呼びかけたところ、飲料水のほか食糧やオムツなどが続々と持ち込まれたという。
三重県四日市市の平野沙季さん(22)はこの日、夜通しで車を運転し、1人でペットボトル15ケースを運んできた。「SNSで窮状を知りました。少しでもお役に立てれば」と書いたメモを残した。
大阪府の会社社長の堀畑敏一さん(54)は防災用給水タンクを持ち込み、自ら組み立てて配水を始めた。「いわきにある工場が東日本大震災で被災し、住民に大変お世話になった。そのご恩返しの一つです」。同店での配布は品物がなくなるまで続けられるという。
静岡市清水区のスポーツジム「ビッグ・エス清水」では27日、午前11時のオープンを前に40人ほどが列を作っていた。並んでいた女性(58)は「お風呂は4日ぶり。肩までつかりたい」と語った。
同施設では井戸水をくみ上げる設備を使い、大雨直後の24日にジムを再開。風呂を開放しているほか、生活用水を供給している。
車で来た同区有東坂の足立英子さんは家の近所のジムでは水着がないと入ることができず、自宅から少し離れたこのジムを訪れた。「友人同士やネットで情報を集めている。行政の広報が遅いので、自分で調べるしかない」。同ジムチーフの薄井温(ゆたか)さん(56)によると、多いときは1日で400人ほどが利用したという。「復旧まで、一致団結でがんばりたい」と話した。
一方、清水区役所にも飲料水などの支援物資が届けられている。「高齢者や体が不自由な人など弱者から優先配布していきたい」(担当者)としている。
清水区のIAIスタジアム日本平では27日夕、サッカーJ1の清水エスパルスの選手約20人が被災者に飲料水を配った。配布時刻前から近くの道には車の列ができ、J1ジュビロ磐田から提供された500ミリリットルの飲料水7200本も用意された。
会場に一番乗りした男性(71)は小学生の孫2人と一緒にやってきた。飲料水はドラッグストアで買い、トイレ用の水は給水所で手に入れているが、風呂に入れないという。「孫たちはエスパルスのファンなので、選手からもらえるのはありがたい」と話した。中学3年の男子生徒は25日に祖父母に連れられて、富士市内の入浴施設に行って以来、風呂に入れていない。飲料水は親類や給水所で手に入れているという。「この水でカップ麺を食べたい」
パート勤務の女性(53)は…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル