2011年3月11日。東日本大震災で震度6弱の揺れに襲われた福島県いわき市では、ほぼ全域の13万戸で断水し、約33万人に影響が出た。水をつくる浄水場に大きな被害はなかったが、張り巡らされた水道管は1600カ所で水漏れが起きていた。
「流量計が最高値から下がらない」「配水池の水が空になった」――。同市水道局の配水調整係長だった則政康三さん(57)は、職員の悲鳴のような無線の交信を局内で聞き、愕然(がくぜん)とした。広範囲に漏水が起きているのは明らかだった。「どこから手をつけるべきか」。復旧計画の策定を急いだ。
福島県南東部に位置するいわき市では468人が死亡・行方不明になり、建物被害は9万棟を超えた。最大8・5メートルの津波が押し寄せた沿岸部は特に被害が大きく、復旧は難航が予想された。
地震後直ちに、浄水場と配水池を結ぶ「基幹管路」の復旧工事が始まった。配水池は家庭などに水を届ける前の貯水施設。そこに水をためることが最優先だった。工事を終えた管路ごとに配水池への送水再開に踏みきり、その先の配水管の復旧も急いだ。だが懸命の復旧活動に、原発事故が影を落とす。
3月12日、東京電力福島第…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル