新型コロナウイルスを捕まえる「人工抗体」を効率的につくることができたと、名古屋大などのチームが発表した。以前より短期間で作製する手法を編み出した。高精度で感染を確認できる抗原検査キットの開発につながるという。
チームは、あらかじめランダムに作製した約10兆種類の人工抗体の候補を用意した。
そこに、新型コロナウイルスの表面にあり、ヒトの細胞に感染するための突起状の「スパイクたんぱく質」をくっつけた磁気ビーズを投入。磁石で磁気ビーズを釣り上げることで、スパイクたんぱく質と結合した人工抗体を多数とらえた。その中から、より強く結合する二つの人工抗体を選び出した。従来は2~3週間かかるが、4日間でできたという。
この人工抗体は、新型コロナウイルスに強く結合するが、2003年に世界で大きな問題になった近縁のSARSコロナウイルスには結合しなかった。
また、新型コロナウイルスの感染力を阻止する能力が高かったという。
作製した人工抗体を使うと、患者らから採取した検体に新型コロナウイルスのたんぱく質が含まれているかどうかを調べる性能のいい抗原検査キットの開発ができるという。また、治療薬の開発にもつながる可能性がある。
チームの村上裕・名古屋大教授(生物化学)は「この人工抗体を足がかりに、さらに感度がよく、強く結合する人工抗体を探したい」と話した。
この手法は今後、別の感染症が登場した場合にも素早く対応できるという。(木村俊介)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル