新型コロナウイルス感染症の治療にかかわる医師や看護師らへの感謝を示すポートレート写真展が、東京メトロ表参道駅で開かれています。展示写真を見ると、治療の最前線に立つ医療スタッフたちの緊張感が伝わってきます。企画した写真家の宮本直孝さん(59)は「実は拍子抜けするほど簡単に、よい表情が撮影できた」と語ります。写真展の狙いや、撮影の裏側について、宮本さんに尋ねました。写真展は21日まで。(朝日新聞記者・岩井建樹) 【写真特集】医師や看護師だけでなく検査技師や事務職員・管理職も……写真から伝わるそれぞれの思い
写真通し「ありがとう。」
宮本さんは広告や雑誌など商業写真の撮影を仕事とする一方、アザや顔の変形など外見に症状がある夫婦、ダウン症のある子とその母親、日本で暮らす難民といったマイノリティや社会問題にかかわる写真展を開催してきました。 今回のテーマは「ありがとう。がんばろう。」。コロナ禍で、多くの人たちが不安に陥っている今、写真家としてできることは何かと、宮本さんは考えました。 「医療従事者の頑張りが、コロナ禍にある社会を支えてくれています。『彼らに感謝を示そう』とよく耳にしますが、抽象的な言葉だけではなかなか実感がわきません。写真を通し、リアルな存在として医療従事者を感じてもらえれば、感謝の気持ちも自然にわきでるのではないかと思いました」 「カメラマンとしての興味もありました。私は『顔ににじみ出る内面』をカメラに収めたい。治療に邁進している医療従事者は、きっと『いい顔』をしているのではないかとの期待がありました」
治療現場の緊張感そのままに
撮影は、今月1日から2日間にわたり、東京・新宿の国立国際医療研究センターで行われました。同センターは全国4カ所の特定感染症指定医療機関の一つで、新型コロナ感染症の治療にあたっています。職員は業務の合間をぬって、一人あたり15分ほどの撮影に参加しました。 「限られた時間の中でどこまで内面が引き出せるのか不安でした。これまでのポートレート写真展では、私が納得できる表情を撮るため、コミュニケーションを取りながら数時間をかけることもあったので」 「ところが始めて、びっくり。すぐに『よい顔』が撮れました。普通、カメラの前に立つと、『格好よく撮ってもらおう』『素敵な笑顔で映りたい』といった欲が出ます。それによって秘められた内面や感情が隠れてしまう。でも、今回協力してくれた方々には、そういった欲がなかった。自分がどう見られるかということよりも、病院の代表、そして医療従事者としての誇りや責任感のほうが強い。命を守る医療現場を支える人たちは、さすがに違うなと思いました」 「ある看護師の女性が撮影場所に現れたとき、看護現場の緊張感をそのまま持ってこられたと思うほどでした。こういった方がカメラの前に立つと、表情や目の力が違います」
Source : 国内 – Yahoo!ニュース