社内の大事な会議を終え、一息ついたところだった。
不動産事業を展開する「And Doホールディングス」京都本店(京都市中京区)。午前10時すぎ、常務の冨永正英さん(42)は、5階フロアに不動産事業部マネジャーの大藤良祐さん(39)といた。
「ドンッ」。
聞いたことのない大きな音は、会社の外からだった。窓からのぞくと、中央分離帯にタクシーが乗り上げていた。その国道は、交通量が多く、車間距離がとれないため、スピードは出せないはず。ほかに衝突したような車もない。
「運転手が意識を失ったんじゃないか……」。後部座席にいたタクシーの客は車外に出て、電話をしながらうろたえている。
冨永さんは大藤さんに叫んだ。「AEDや!」。2人は近くのクリニックや銀行へ散り散りに走っていった。
誰かを助けられる人でいたい――。冨永さんには、そう思うきっかけがあった。
15年ほど前、家族旅行で新…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル