春は旅立ちの季節――。駅のホームには、家族や恋人をあふれる思いで見送る人たちがいる。一方で駅員にとっては「動き出した車両に近づくことはないか」と、神経を使う光景でもある。山陽新幹線の小倉駅(北九州市)では、独自の「仕掛け」が効果を発揮している。
「ここは見送りのお客さんが多いな」。小倉駅の新幹線ホームで運転係員を務める久保川香織さん(30)は、3年前に博多駅から転任してそう思った。
北九州空港は福岡空港よりも街の中心部から遠く、小倉駅では東京や大阪などへの遠距離の新幹線利用が多いとされ、そのため見送り客も多いとみられる。昨年1月のある日の小倉駅の改札通過人員は2万1027人で、うち入場券利用は約11%の2258人。博多駅は4万6478人中3245人で約7%、岡山駅は5%だった。
見送り方も熱がこもっていて、孫の門出を見守ろうという祖父母らが発車の1、2時間前に駅に来て、弁当を持たせているのを見かける。祖父母に限らないが、見送る相手しか目に入らなくなり、発車間際でも車両から離れなかったり、動き出した後に窓に手を伸ばしたりする人もいる。
緊急停止のスイッチを押すような大事に至らないように、笛やアナウンスで鋭く注意喚起するが、せっかくのはなむけに水を差すことになるし、駅員の側も後味が悪いという。
「安全な見送り」を、どうやって促すか。昨夏、駅員たちで話し合い、このスペースから見送ってほしいという「立ち位置」をホームに示すことにした。折しもお盆前。善は急げと、新幹線の運行が終わった夜間、駅員が自ら作業した。
黄色い点字ブロックの内側に空…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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