全国には「○○地方」と即答しがたい県が、いくつかある。その代表例が新潟県だ。「関東甲信越だ」「いや、中部だよ」「実は東北」……議論百出するこの問題。正解はあるのだろうか?
教科書ではほとんど「中部」 作られた地方名
ずっと中部地方だと思ってきた。約40年前、中学校でそう習ったからだ。新潟県長岡市の市立中学に通う長男の教科書を読む。新潟は中部に入っている。やはりそうだ。でも、なぜ?
文部科学省に聞く。「教科書検定でそう決めているわけではないんです」。えーっ。「確かにほとんどの教科書が新潟を中部にしていますが、実は新潟県を何地方にしようと、検定で不合格になることはありません」。では誰が新潟を中部に? 「それぞれの教科書会社が決めています」
長男の教科書「中学生の地理」の出版元の帝国書院に聞くと「実は決まった地方区分はありません。便宜的に地方でくくり、そこにどんな共通点があるかを調べ、学ぶのが目的です」。でも、「○県は何地方?」とテストに出た覚えが……。「最近はそういうテストは減ったと聞いています。例えば、三重県は近畿に入っていますが、実は愛知県とのつながりが強く、東海圏とされることもある。教科書が絶対ではない、ということも学んでいただければ」
そもそも中部地方とは? 日本大百科全書(小学館)によると「1904(明治37)年、わが国で地理の国定教科書がつくられたころから使われた地方名」。なんと元々そういう地方があったのではなく、学校で教えるために地方名を作ったのだ。同事典のウェブ版では当時の教科書編集者の言葉を紹介する。「関東及び奥羽と近畿の中間の地方は別に適当なる名称なきがゆえにしばらく本州中部地方の名を用いたり」……うん、中部じゃないな。
国土政策は「東北」、戊辰戦争以来の歴史も
コロナ禍の今春、大型連休を前…
2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル