ランドセルの購入時期が年々早まっている。少子化にもかかわらず、ランドセルを選んで購入する一連の行動を指す「ラン活」という言葉が生まれるほど活況でもある。背景には、少子化により子供1人あたりに目をかける大人の数が増え、購入予算も高額化することで市場規模を広げていることがある。
■ランドセル専門店次々オープン
8月8日、福井市内にランドセル専門店「イクラボやしろ店」がオープン。定番の黒や赤だけではなく、色とりどりのランドセルが並んだ。店内には網でできたアスレチック遊具や大きな木を模したオブジェなど、子供がのびのびと遊べる仕掛けも設けている。
平成27年8月、福井市内に1号店を出した後、29年に福井県越前市に2店目をオープンさせ、今回で3店目。扱うランドセルの価格帯は5万~8万円台だが、売れ筋は6万円前後に及び、売り上げは右肩上がりで年間8千万円に達した。
「ランドセルは高い商品。見て選びたいという要望も多く、年々こだわりも強くなっている」と話すのは、店を展開する「山耕」(福井県越前市)の山田耕一郎社長(47)。同社では大手メーカーの量販品は扱わず、「工房系」と呼ばれるほぼ受注生産の商品をそろえる。オリジナル商品「ダイナソー恐竜ランドセル」も手がけ、県外の購入者も増えているという。
■少子化なのに市場は活況
山耕の本業は学生服の卸売り。なぜランドセル販売に新規参入したのか。それはランドセル市場が活況を呈しているためだ。
ランドセル市場は少子化で小学校に入学する児童数が減少しているのに、拡大を続けている。平成18年に120万人だった小学1年生は30年には106万4千人と、14万人近く減少した。これに対し、ニッセイ基礎研究所の推計では、ランドセルの市場規模を同じ年で比較すると、359億円から546億円と1・5倍に跳ね上がった。
少子化により、子供1人に目をかける大人が増加し、これに伴い購入予算が高額化し、市場規模を広げているのだ。同研究所は「お盆の帰省時に祖父母と一緒に選ぶケースが増え、ランドセルの販売ピークは入学直前の冬から夏に前倒しになっている」と分析する。
「工房系」の人気が高まったのも、購入予算の高額化が背景にある。工房系は少量生産で早く売り切れるため、購入時期の早期化に拍車をかけている。
■制服販売の活性化も狙い
一方、山耕が展開するランドセル販売店は、制服販売店の事業承継の受け皿としても活用する。
「6年ほど前、東京のランドセル専門店を訪れ、楽しげに買い物をしている親子に衝撃を受けた」と山田社長。制服や体操着は学校指定の販売店で買うことが多く、店を選べないところが購入者の不満になりやすい。また、後継者不足による閉店など、業界に「尻すぼみ感」も漂っていたという。そこで、山田社長は楽しく買い物できるランドセルを取り扱うことで、制服販売の活性化につなげようと考えたのだ。
実際、越前市の店舗は、高齢になった店主からスクール用品店を事業承継する形でオープンし、制服も販売。今回開店させた「やしろ店」でも制服を扱うとともに、裾上げなど制服の直しを行う工場を引き継いだ。山田社長は「ミシンを並べて作業しているところを見せ、こうした仕事に光を当てていきたい」と語り、店内に様子が見えるようガラス張りで作業場を設置している。
山田社長は「ランドセルも学生服も楽しんで購入してもらいたい」と話している。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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