北海道剣淵町の生産者でつくる剣淵町トマトジュース生産組合は、地元の福祉施設にジュース作りを委託し農福連携を進めている。約30年前から続き、加工の拠点として定着。商品の「夢みるトマト」は道の駅などで販売され、地域の特産になった。連携で生産者は栽培に専念でき、福祉施設の利用者は働く場を得られる他、地域活性化にも一役買っている。
交流 地域ぐるみ
組合のメンバーは5人。米や小麦などを栽培する傍ら、組合で年間約5トンのトマトを生産する。品種はジュースに向く「RS13」と「なつのしゅん」。有機質肥料を入れた畑で、農薬の使用を抑えて栽培する。
「取り組みが始まったのは“農福連携”という言葉が広まる前から。ジュースへの加工に人手を確保するためだった」
下田秀樹組合長はそう振り返る。組合は自家消費向けのトマトジュースを商品化しようと、生産者が1987年に立ち上げた。当初は生産者が町内の施設で加工していたが、規模拡大などで人手が不足。その時、利用者の安定した仕事の確保を求めていた障害者支援施設「剣渕北の杜(もり)舎」とニーズが合致し、連携が始まった。
トマトジュース「夢みるトマト」は、1リットル、500ミリリットル、180ミリリットルの3種類を毎年1万本製造する。価格は500ミリリットルで410円。町内の道の駅や店舗の他、一部は道外でも販売している。
トマトの収穫時期(7~9月ごろ)になると、生産者はトマトをコンテナに詰めて出荷。施設がジュースに加工して納入する。施設内には加工場があり、大きな鍋で煮詰めたトマトを、白衣を着た10人ほどの施設利用者がかき混ぜ、瓶詰めなどの作業をする。
組合が作業の加工代金を支払い、その収入が施設利用者者の自立につながっている。施設はトマトの他、組合のメンバーが作ったシソやニンジンなどのジュースへの加工も手掛けている。組合以外の農家らから受託する分も合わせると、トマトなどのジュース加工は、施設の農産加工の売り上げの3分の1を占める柱となっている。
剣渕北の杜舎支援課の清水俊之課長補佐は「剣淵町の発展に向けて基幹産業である農業に重きを置いてきた。地元の農家とタッグを組んで進めている」と話す。
障害者らに農作業などを担ってもらう「農福連携」は、年々注目度が高まっている。その先駆けとして長く連携できたのは、障害者らに地域の祭りに参加してもらうなど、地域住民との交流や、受け入れる環境づくりが大きいという。
下田組合長は「消費者には、トマトなどが出回らない冬の時期にもジュースで楽しんでほしい。後継者の育成にも力を入れながら、施設との連携を継続したい」と話す。
日本農業新聞
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