旅するはなちゃんのランドセル 「奇跡的」と添えた娘待つ母の思い

 「行ってきます」と家を出て行った娘の声が忘れられないまま、12年半が過ぎた。手元に残るのは赤いランドセルだけ。今も行方を捜し続ける両親にとって、本人を思い起こす唯一の品だ。それでも「旅」に出すことを決めた。どうしても伝えたい思いを添えて――。

 展示室のガラスケースに、赤い布製のランドセルが広げられている。一部すり切れたところがあるものの、色は鮮やかなまま。泥水につかったからだろうか。一緒に収められているノートや教科書の表紙は波打ち、少し茶ばんでいる。

 そばにある音読の宿題カードには3月10日の分まで花丸がついている。空欄のままの22日には、日付に赤く太い丸印。「やっと10歳になれる」と待ちわびていた誕生日だった。

「お兄ちゃんと同じがいい」

 持ち主は、宮城県石巻市にあった旧大川小学校4年の鈴木巴那(はな)さん。入学前、「お兄ちゃんと同じものがいい」と選んだランドセルだ。

 筆入れやノートを入れる順番…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

Japonologie:
Leave a Comment