東京・浅草のグラフィックデザイナーYou(ユウ)Say(セイ)さんはこの春、久しぶりに宮城県気仙沼市を訪れた。仕事の気分転換だった。
目的地は銭湯「友の湯」。事前に調べたら、相当レトロな建物。行くしかない。
脱衣所に入ると、壁一面に新聞記事が貼られていた。どれも苦境の友の湯にエールを送る内容だった。
12年前の震災で、創業64年の建物や配管に大きな被害が出たこと。2週間後に営業を再開し、数百人に毎日の風呂を提供したこと。客はいま1日20~30人で、赤字覚悟で続けていること――。
以前から相次ぐ銭湯の廃業が気になっていた。
事情を聞こうと話しかけた経営者の小野寺学さん(65)の口から、「薬師湯」という銭湯の名前が出てきた。「かつて東京に住んでいた時に通っていた」。驚いた。
「それ、僕がよく行く銭湯で…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル