安倍晋三首相とイランのロウハニ大統領との24日の会談では、サウジアラビア東部の石油施設への攻撃によって深まる米国とイランの対立のはざまで、対話による緊張緩和を働きかける日本の難しい立場が改めて浮き彫りになった。
首脳会談に同席した西村明宏官房副長官は、会談後の記者団への説明で「米イラン間の仲介ではない」と2度繰り返し、中東外交の厳しさをにじませた。
中東地域の安定は日本にとって死活問題だ。日本は石油の輸入の8割超を中東に依存しており、そのうち4割がサウジ産で、偶発的な軍事衝突が起これば資源確保に深刻な打撃を受ける。首相が会談でロウハニ師に「船舶の安全な航行確保に向けて、沿岸国としての責任を全うする」ことを求めたのは、国益を考えれば当然といえる。
米国と同盟関係にある一方で、イランと伝統的な友好関係を保つ日本には、国際社会からの中東地域の緊張緩和に向けた橋渡し役としての期待もある。
ロウハニ師との会談後、首相は国連総会の一般討論演説で、6月のイラン訪問の際に最高指導者ハメネイ師が核兵器を製造、保有、使用する意図がないと明言したことに言及した。各国首脳が一堂に会する国連総会であえて言及したのは、緊張緩和を呼びかけるとともに核合意の履行停止措置をとるイランを牽制(けんせい)する意味を持つ。
ただ、米イラン双方との友好関係がもろ刃の剣になる懸念もある。イラン核合意を順守する立場からトランプ氏と一線を画してきた英仏独も米国と同調し、対イラン包囲網を築く。日本がイランに傾斜しすぎれば、先進7カ国(G7)の結束力が揺らぐジレンマも抱える。名指しこそ避けたものの一般討論演説で、石油施設の攻撃について「国際経済秩序を人質にする卑劣極まる犯罪」と非難したのには、米欧への配慮が透けてみえる。
首相は引き続き、外交努力で中東地域の緊張緩和を働きかける考えだが、結果を出すのは容易ではない。安倍外交の真価が問われる。(ニューヨーク 沢田大典)
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