安倍晋三首相は中国の李克強首相との4日の会談で、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺での中国当局船の活動などを取り上げ、前向きな対応を強く求めた。ただ、李氏の反応は鈍く、状況を改善する考えは示さなかった。首脳の相互往来の活発化で日中関係は改善基調にあるが、東シナ海や人権をめぐる状況はむしろ悪化しており、自民党では習近平国家主席を国賓で迎えることへの疑問の声が強まりつつある。
「尖閣諸島周辺海域などの東シナ海をはじめとする海洋安全保障問題、邦人拘束事案などにつき、中国側の前向きな対応を引き続き強く求めた」
約25分間の会談に同席した西村明宏官房副長官は、同行記者団にこう説明した。だが、これらは安倍首相が昨年10月の訪中時にも習氏や李氏らに直接伝えていた懸案で、事態は1年前より悪化している。
尖閣諸島周辺での中国海警局の船の活動は、今年4月12日から6月14日まで64日間連続で確認され、平成24年9月の尖閣諸島「国有化」以降、最長記録を更新した。最近も、中国の王岐山副主席が参列した10月22日の「即位礼正殿の儀」当日を含め、11月4日まで20日連続で航行が確認された。
中国での不透明な邦人の拘束も増えた。2015(平成27)年以降、中国当局はスパイ活動への関与などを理由に少なくとも邦人13人を拘束、8人に実刑を言い渡した。さらに9月には北海道大の男性教授が北京で拘束された。理由は明らかになっていない。
準公務員である国立大の教員が初めて拘束される事態に対し、日本の中国研究者らでつくる「新しい日中関係を考える研究者の会」(代表幹事・天児慧早大名誉教授)は「言葉にし難い衝撃を受けた」として「深い懸念」を表明した。
自民党の政務三役経験者は取材に「習氏の国賓としての来日に明確に反対する」と述べており、安倍首相の足元からも疑問の声が出ている。(バンコク 原川貴郎)
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