茂木敏充外相は中国の王毅国務委員兼外相との会談で、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺への領海侵入など「力による現状変更の試み」を自制するよう強く求めた。ただ、王氏は記者団の前で自国の立場を一方的にまくし立てるなど、日中を取り巻く緊張に改善の兆しは生まれなかった。 「尖閣諸島周辺海域に関する日本の立場を説明し、中国側の前向きな行動を強く求めた」 茂木氏は会談後の共同記者発表でこう強調した。 日本は王氏の訪日にあたり、周到な環境整備を済ませていた。中国側は菅義偉政権発足後、早期の王氏訪日を打診していた。米中関係が厳しさを増す中、米国と密接な関係にある日本との対話を重視するためだ。 しかし、政府は同盟国や友好国を優先する姿勢を鮮明にした。10月6日に日本が推進する「自由で開かれたインド太平洋」の主軸を担う日米豪印4カ国の外相会合を初めて東京で開き、中国に結束を見せつけた。 今月12日にはバイデン前米副大統領が菅首相と電話会談し、尖閣諸島が日本防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用範囲だと言及。17日にはオーストラリアのモリソン首相が来日し、自衛隊と豪軍の共同訓練などの「円滑化協定」の締結で大枠合意した。 あえて辛辣なメッセージを送った上で王氏を迎えたのは、菅政権でも安全保障では強硬路線を貫く姿勢を示すためでもある。 中国海警局の船は今年だけで尖閣周辺を計300日以上にわたり航行。海警局の船に武器使用を認める法案も準備されるなど先鋭化の流れは止まらない。日中間では習近平国家主席の国賓訪日が棚上げされているが、外務省幹部は「海洋進出が改善されない限り前に進むことはない」と語る。 ただ、王氏も黙っていなかった。共同記者発表では手元の紙を見ることなく尖閣に関する中国の主張を展開。東シナ海の緊張は日本漁船に責任があるとした上で「敏感な水域で事態を複雑化させる行動を回避するべきだ」と言い放った。 中国とは新型コロナ対応や経済協力を通じた関係改善が進む。ただ、安全保障分野では安易な妥協があってはならない。一歩も退かない断固とした対応が求められている。(石鍋圭)
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