取引業者からのリベートなど約1億2千万円の収入を申告せず約5千万円を脱税したとして、所得税法違反罪に問われた日本大学前理事長・田中英寿被告(75)に対し、東京地裁は29日、懲役1年執行猶予3年、罰金1300万円(求刑・懲役1年、罰金1600万円)の判決を言い渡した。野原俊郎裁判長は「業者からの謝礼などが表沙汰になるのを避けようと、現金を隠蔽(いんぺい)した」と述べた。
田中前理事長は「判決を厳粛に受け止める」とコメント。弁護人によると控訴しない方針だという。
判決によると、前理事長は2018年に1千万円、20年に1億820万円の計1億1820万円の収入を税務申告せず、計約5200万円の所得税を免れた。
東京地裁「業者からの謝礼を隠蔽」
判決は「我が国最大規模の教育機関である学校法人の理事長が自ら主導し、大学との取引で利益を得た業者から多額の謝礼などを受け取った」と認定。15年の税務調査でも申告漏れを指摘されていた過去に触れ、「申告の必要性を十分認識していた」と指摘した。
大学トップの立場を踏まえ「適正な納税制度への社会的信頼に与えた影響も軽視できない」とも述べた。一方、起訴内容を認めて修正申告を済ませ、大学の役職を全て辞めたことを考慮して執行猶予を付けた。
所得隠しと認定された1億1820万円の内訳は、大阪市の医療法人前理事長が計7500万円▽金沢市の建設業者が3千万円▽大阪府の設計事務所が1千万円▽日大元理事が自ら拠出したり取引業者から集めたりした計300万円など。
日大は「公共性の高い学校法人理事長として決して許されない行為で、極めて遺憾」とコメントした。(原田悠自)
「ちゃんこ屋詣で」の実態は……
マンモス大学のトップが取引業者から受け取ったリベートを隠したとされる脱税事件。その背景には13年に及ぶ「一強体制」で築かれた利権構造があったが、実態が法廷で十分明らかになることはなかった。
「受領した現金を自宅で保管…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル