日本大学付属病院の建て替え工事をめぐって2億2千万円の日大資金が外部に流出したとされる事件で、背任容疑で逮捕された日大理事が東京都内の設計事務所に対し、提出済みの見積額を約2億4千万円増やした金額に差し替えさせた疑いがあることがわかった。東京地検特捜部は理事がその後、評価点を改ざんして同事務所を選定したとみており、見積額の増額は流出させる資金などを確保するためだった疑いがある。
特捜部は田中英寿理事長(74)にも不透明な金が流れた可能性があるとみて田中氏の自宅の捜索や任意聴取を行い、さらに実態解明を進めている。
逮捕されたのは田中氏側近の日大理事・井ノ口忠男容疑者(64)=大阪市=と、同市の医療法人「錦秀会(きんしゅうかい)」前理事長の籔本雅巳容疑者(61)。
流出資金、確保する目的か
日大は2019年12月、医学部付属板橋病院(東京都板橋区)の建て替え工事について、設計・監理業者を選ぶ「プロポーザル」(提案型の審査)実施と選定業者との値引き交渉を、完全子会社「日本大学事業部」(世田谷区)に委託した。井ノ口容疑者は同社の営業を統括する取締役として業務を取り仕切った。
複数の関係者によると、プロポーザルには4社が参加し、20年1月30日の期限までに企画提案書を提出した。都内の事務所は設計費17億3700万円、監理費6億8123万円の計24億1823万円と見積もった提案書を出した。
井ノ口容疑者は期限後の翌2月上旬、同事務所の副社長らに設計費の引き上げを要求。設計費を2億4300万円増額した19億8千万円に差し替えさせ、監理費と合わせた総額を26億6123万円にしたという。
評価点改ざんで2位→1位に
国土交通省は設計業者が請求できる報酬基準を定めており、建物の構造に応じた業務量に人件費を乗じるなどして算定する。差し替え後の約26億6千万円は、日大側が想定する報酬の上限に近かったとみられる。
そのうえで行われた審査は日大や事業部の幹部7人が審査員を務め、評価点の合計で同事務所は2位だった。井ノ口容疑者は同月中旬、同事務所の評価が低かった医学部長(当時)の点数を水増しするよう事業部の社長に指示し、1位に引き上げて選定した疑いが持たれている。
別の設計事務所とは1.7億円のコンサル契約
実体のない「コンサルタント料」名目で、不正に流出したとされる2億2千万円。これとは別に都内の設計事務所が、大阪府内の設計事務所とも1億7千万円のコンサルタント料を払う契約を結び、日大が支払った着手金から1億円を送金していたことも新たにわかった。
複数の関係者によると、府内…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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