日本大学付属病院の建て替え工事をめぐる事件で、背任容疑で逮捕された日大理事の井ノ口忠男容疑者(64)が、設計業者を選ぶ審査の要項案を都内の設計事務所に事前に渡していたことが、関係者への取材で分かった。井ノ口容疑者らは審査で選ばれた同事務所から2億2千万円を流出させて利益を得た疑いがあり、東京地検特捜部は確実に選定されるよう当初から便宜を図ったとみている。
関係者によると、井ノ口容疑者が取締役を務めた日大の子会社「日本大学事業部」は、板橋病院の建て替え工事の設計・監理業者を選ぶ「プロポーザル」(提案型の審査)業務を日大から委託された。事業部は2019年12月中旬に説明会を開き、参加社に実施要項を配布した。要項には新病院が目指すコンセプト、必要な病院機能、敷地や病床数といった設計条件、選考日程などが記されていた。
一方で井ノ口容疑者は、医療法人「錦秀会(きんしゅうかい)」(大阪市)の前理事長・籔本雅巳容疑者(61)=背任容疑の共犯として逮捕=に対し、実施要項の「案」を事前にメールで送信していた。要項案は籔本容疑者から大阪府内の設計事務所代表に転送され、この代表を通じて、説明会の約1カ月前の11月中旬には都内の設計事務所の役員に渡った。府内の事務所代表は都内の事務所役員に最初にプロポーザルへの参加を持ちかけた人物で、その後も間に入って籔本容疑者らの指示を伝えていたという。
特捜部は要項案がやり取りされたメールを押収。井ノ口容疑者は「(事前に)流したかもしれないが、特に有益な情報ではない」と供述しているという。
■受け取った約1億円、飲食費…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル