気候変動問題への対策を求め、スウェーデンの少女グレタ・トゥンベリさんら世界中の若者が声を上げる中、欧米各国は「脱炭素」へとかじを切りつつある。一方、石炭火力を「ベースロード電源」として重視し、現在も石炭火力発電所を建設中の日本には環境団体などから批判が相次いでいる。増設を巡っては周辺住民から国や企業を訴える訴訟が各地で起こされており、中には地元学生が原告となったものも。「なぜ学生が?」との疑問が浮かび、理由を追った。(共同通信=武田惇志、浜田珠実)
▽国際的批判に衝撃
神戸大経済学部に通う今井絵里菜さん(23)は2018年11月、神戸製鋼の石炭火力発電所を巡る行政訴訟に原告として加わった。地元住民らは9月に「大気汚染や温暖化の恐れがある」として神戸地裁で差し止め訴訟に踏み切っていたが、環境影響評価(アセスメント)手続きにも問題があったとして、国に評価通知を取り消すよう求めて大阪地裁に提訴したのだ。
高校生のころから環境問題に関心があったという今井さんは神戸大在学中の17年、ドイツのキール大へ留学。11月、同国のボンで開かれた国連気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)に日本の環境NGO団体の一員として参加した。
会場では東南アジアからの参加者らが横断幕やプラカードを持って「日本は石炭火力への融資をやめろ」と訴えている姿に出くわした。温暖化問題について、これから発展していく途上国がCO2を排出している構図が主だと考えていた今井さんは、先進国である日本がいまだに石炭火力に依存していると国際会議の場で強く批判されたことに「日本人として衝撃を受けた」という。
帰国後、京都市で開催された石炭火力問題を巡るシンポジウムに参加。そこで神戸製鋼の増設計画について「神戸大の近くで起こっている問題だが、興味を持ってくれる若者が少ない」という声を聞いた。「同世代の関心を高めるために、何かできることはないか」。そう考えて原告団に加わった。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース