ロシアの攻撃が続くウクライナから避難した人を治療するため、福岡市の佐藤拓史医師(57)が隣国ハンガリーの国境付近に設けられた医療施設でボランティアで働いている。ロシア兵の銃撃でけがをした人も運ばれており、「避難民は肉体的にも精神的にも疲弊している」と話している。
佐藤さんが28日、KBC九州朝日放送と共同のオンライン取材に応じた。国内外の被災者や難民を支援する国際医療NGO「AMDA(アムダ)」(本部・岡山市)の理事を務め、2016年の熊本地震や中南米ハイチでの大型ハリケーン、20年7月の熊本豪雨の被災地などで、災害医療の専門家として診療にあたってきた。
今回は20日にハンガリーに入り、国境近くの村にある元小学校の建物と、そこから北西約40キロの駅にそれぞれ設けられた仮設の医療施設で治療を行っている。
元小学校には、国境のハンガリー側にある避難民キャンプで体調不良を訴えた人が昼夜を問わず運ばれてくる。多い時は一日に700人以上が搬送される。
26日には、右のふくらはぎが化膿(かのう)した23歳の女性が運ばれてきた。首都キエフから逃げる途中、ロシア兵に撃たれたと話した。国境まで3週間、杖をついて歩いてきたという。佐藤さんは「持病やけががあり、十分な治療を受けられないまま避難している人も多い。がまん強く顔色を変えない人が多いが、過酷な状況で言葉にできない思いを抱えている」と話す。
元小学校では24時間交代で勤務し、勤務が終われば駅の医療施設に移動する。ボランティアのスタッフにも、睡眠不足やストレスから体調を崩す人も出てきているという。厳しい環境だが、佐藤さんは「医師になったのは、こうした活動のため」と話す。
大学卒業後、予備校などで数学を教えていたが、29歳で一念発起して医学部に進んだ。大学生の時に知った、NGO「ペシャワール会」(福岡市)でアフガニスタンの人道支援に取り組む中村哲医師の姿が心にあった。
研修医時代には、中村さんが…
【5/10まで】記事読み放題コースが今なら2カ月間無料!詳しくはこちら
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment