東京から北に約720キロ、北海道の南西部、日本海に浮かぶ奥尻島(奥尻町)。日本でただ一つの離島ワイナリーがある。海岸線近くで潮風を浴びて育ったブドウが醸す味は、類い無いものだった。
「日本で一番訪問が困難なワイナリーへようこそ」
2020年11月終わり、奥尻ワイナリー常務の菅川仁(すがかわひとし)さん(38)が笑顔で迎えてくれた。
3度目の正直
取材の約束をしてから2回、日程を変えざるを得なかった。1回目、奥尻空港の視界不良で1日1便の函館発の飛行機が飛べなかった。2回目は島に降り立ったが、当日にワイナリーの関連企業で新型コロナウイルスの感染者が出て、念のためワイナリーの社員も全員がPCR検査を受けることになり、取材はお預けとなった。
そして3回目。
荒天時の欠航が飛行機よりは少ないと聞き、船を使うことにした。函館から車で日本海側の江差町まで約1時間40分。1日1便のフェリーで2時間20分かけ奥尻島東側の奥尻港へ。旅館に1泊して翌朝、レンタカーで西側のワイナリーまで40分。
その日は北西の風が強かったが、天気には恵まれた。日本海の青さと巨大な奇岩の立つ海岸の風景が目に焼きつけられた。
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143平方キロの島には約2500人が住む。ブドウ畑は島の南西部と西部の7カ所に点在する。海岸線から400メートルほどの近さにある畑もある。
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この年の8月上旬、菅川さんは打ちひしがれていた。台風に見舞われ、西部の岸は強風で海水のしぶきが舞い上がった。台風一過の畑で見た光景は、波しぶきにぬれ、葉がしおれたブドウだった。
「葉にたくさん真水をかけて塩…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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