新型コロナウイルスの感染拡大で、マスクの品薄状態が続いていることから、安倍首相は1世帯あたり2枚ずつ、布マスクを配布すると発表した。経済対策についてはいまだ具体案がほぼ提示されない中での突然の発表に、SNS上では戸惑いの声も相次いだ。「『自粛せよ』『布マスクは2枚出す』では救われない。経済なバックアップがなければ人は死ぬ」と警鐘を鳴らすのは、ノンフィクションライターの石戸諭さんだ。ハフポスト日本版に「経済が大切な理由」を寄稿した。
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「経済は専門外なのでわからない」という感染症専門家
「専門家が望む感染症対策を実行すれば、その分経済活動は停滞し、感染症ではなく経済リスクも膨らみます。その二つのリスクについてどう考えていますか?」
最近、旧知の医療系の取材先や、方々で会う医師や公衆衛生の専門家に聞いて回っている。
大多数の回答をざっくりまとめると「経済も大事なのはわかるけど……。経済は専門外なのでわからない」になる。だが、海外には公衆衛生、疫学の専門家がきちんと経済政策と人の健康について分析を施している例がある。
それが『経済政策で人は死ぬか? 公衆衛生学から見た不況対策』(草思社)だ。著者は2人。デヴィッド・スタックラーは公衆衛生の専門家であり、サンジェイ・バスは医師で医学博士号を持っている。
彼らの結論は極めてシンプルだ。経済政策の失敗もまた人の命に直結する。特に、不況下で財政緊縮策を取った場合、財政刺激策を取るよりも死者が増大するというものだ。
今の日本はどうか…?
内閣府の発表(2020年3月9日)によると、2019年10~12月期の国内総生産(GDP、季節調整値)改定値は、前期比1.8%減、このペースが1年続くと仮定した年率換算は7.1%減。この数字は、新型コロナウイルスショックが直撃する「前」の数字であり、消費税増税ショックにコロナショックが加われば、景気は確実に減退する。
なるほど、国も対策はしているだろう。経産省や厚労省の対策案を記したホームページのリンクがSNS上で一部話題になり、「すごい支援策がある」という声とともに私にも送られてくる。だが、これらはあくまで一時的なもの、言い換えれば急場しのぎの対策だ。
無論、ないよりはあったほうがはるかにマシな融資策もあり、フリーランスに対する貸付プランも用意されている。
大事な点は、これでは足りないということだ。従業員の休業や解雇を検討する企業は後を絶たない。厚労省が把握しているだけ(3月30日時点)で、解雇などが見込まれている人数は1021人、従業員の休業など雇用調整を検討する事業所は3825に達する。
経済対策は急場しのぎだけでなく、急場をしのいだ先に、回復が待っていなければ、本来あったはずの仕事が無くなる人が大量に発生する。
スタックラーらの分析では、失業そのものだけでなく、失業への不安、家を失いそうになる不安があるだけで健康に影響を及ぼす。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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