鳥取県日野町の田渕久之さん(77)が、甲羅の長さ約38センチの巨大なスッポン(ニホンスッポン)を町内の日野川で捕獲した。専門家によると、国内で過去に確認された野生の個体では最大級に近い大きさという。田渕さんは、「展示や研究の施設で受け入れてくれないだろうか」と無償で提供する意向だ。
田渕さんは5年ほど前から、独特の漁法でスッポンを捕っている。数十センチの糸の先に針が付いたものを5本ほど並べて別の糸に結んだ、はえ縄のような仕掛けを使う。ドジョウやイカ、アユの切り身などの餌を付けて川に沈めておくと、夜のうちにスッポンが食いつく。かつてウナギ漁をしていた時の経験を生かした捕り方で、この方法でスッポンを狙う人は周囲にはいないという。
大物を捕まえたのは6月下旬の早朝。いつものように、前日夕に仕掛けたポイントに向かった。糸をたぐり寄せると獲物は泥に潜っていた。糸を引く力を強めてもなかなか上がってこない。「30センチ超えの大物だな」と直感、玉網を使って捕獲した。
捕まえた時にいつも調理を頼んでいる近くの食堂「ルートサイド竹の子村」に持ち込んだ。「びっくりした。ケタ違いだと思った」と経営者の竹永明文さん(68)。スッポン養殖を手がけた経験があり、調理歴は約40年。その目で見ても明らかに大物だと分かった。測ってみると甲羅長約38センチ、重さは5キロ以上あった。
野生のスッポンは甲羅長30センチ程度まで成長するとされるが、それを超える大型の個体も時折姿を見せる。淡水性カメの研究者らでつくる日本カメ自然誌研究会によると、2011年に京都府で甲羅長38・5センチ、重さ7・3キロのスッポンが捕れた記録がある。また島根県立宍道湖自然館ゴビウスは16年10月、甲羅長39・3センチ、重さ6・7キロのスッポンを展示。松江市内の川で捕獲された個体という。
一方でスッポンは環境省と鳥取県のレッドデータブックでともに、生息数が少ないなどの理由により「情報不足」と区分されている。自然誌研究会の矢部隆代表(理学博士)は、「今回のように、生息地に関する確かな情報や捕獲個体のデータの積み重ねが大切」と話す。
田渕さんがこれまでに捕まえたスッポンは100匹以上。食用が目的だが自身はあまり食べず、提供することで竹の子村で仲間との宴会が開かれるのを楽しみにする。
そしてスッポン捕りを続ける理由がもう一つ。仕掛けを沈めるポイントを探る時は双眼鏡を片手に川で下見をする。「あの近くにおるな」。そう当たりをつけて狙い通り捕れた時の楽しさが忘れられないという。今回の大物が捕れたのはそうやって初めて仕掛けたポイントだった。
スッポンは竹の子村で8月中旬ごろまで飼育している。引き取り手がない場合は川に帰すことも検討するという。問い合わせは竹の子村(0859・72・1119)まで。(清野貴幸)
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公益財団法人・日本自然保護協会は、「日本のカメ一斉調査」を9月末まで実施している。身の回りで見つけたカメをスマートフォンで撮影し投稿する。誰でも参加できるとして協力を呼びかけている。
一斉調査は、ミシシッピアカミミガメなど外来種が増え、ニホンイシガメ、クサガメなどの在来種が減りつつある現状を明らかにしようと10年ごとに実施。過去2回の調査では、観察されたカメの約6割がアカミミガメだったという。
撮影は専用のアプリを使い、人工知能(AI)の助けも借りて種名を特定し、投稿する。併せて、発見した環境やカメが何をしていたかなどの観察メモも求めている。一般家庭や水族館などで飼育されているカメ、過去に撮影した写真の投稿は対象外。結果は協会の特設サイトで11月に公表する。監修は日本カメ自然誌研究会の矢部隆代表。
アカミミガメは6月から、アメリカザリガニとともに「条件付特定外来生物」に指定され、野外に放すことや販売、輸入が罰則・罰金の対象になった。自宅での飼育はできる。(清野貴幸)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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