板倉吉延
純米酒を、岐阜県内を走る長良川鉄道の観光列車に載せ、列車の振動で6カ月熟成させる試みが始まった。振動で熟成は進むのか。老舗蔵元と鉄道会社が手を組み、結果を見て「旅する日本酒」としての販売をめざす。
振動熟成を試すのは、岐阜市門屋門の蔵元「白木恒助商店」。1835(天保6)年創業の老舗蔵元だ。50年熟成させた古酒のほか、8年前からは南伊豆の海底約20メートルに沈めて熟成させた日本酒などを手がけてきた。
海底で波にゆらゆらと揺られた日本酒は「熟成が進む」と好評で、代表社員の白木滋里さん(53)は「振動で日本酒がおいしくなるのでは。県内でも何かできないか」と考えた。
あいにく岐阜県には海がない。そこで「海以外に振動を与えられる場所」として列車内を思いつき、蔵元からも近い長良川鉄道から協力を得たという。
17日から、観光列車「ながら」の一角に木箱に詰めた日本酒を置き、美濃太田―北濃間72・1キロを往復。300ミリリットル入りの純米酒「達磨(だるま)正宗」(瓶48本)を6カ月かけて熟成させる。酒には岐阜市産の米を使う。試行後は、熟成具合を確かめるためのお披露目会のほか、店頭や観光列車での販売を予定している。
どのように仕上がるかは未知数。価格も未定。白木さんは「開けてみてのお楽しみ。味を確かめ、増産も検討したい」と話す。(板倉吉延)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル