トランプ米大統領は25日の日米首脳会談後に、貿易交渉について原則合意し、来月にも署名する考えを明らかにした。農産品の対日輸出増加につながる貿易交渉の成果に一定の評価を下したとみられ、トップ会談で交渉は一気に前進した。大統領選に向けた国内農家からの支持拡大という「実利」を優先し、米産業界が求める包括的な対日協定を当面、断念した格好だ。
9月下旬の大枠合意にめどをつけた貿易協議は、会談直前まで米政権内に「悪魔は細部に宿る。合意するまでは合意したとはいえない」(大統領側近)と妥結に慎重な声が出ていた。
通商政策はトランプ氏の再選戦略の屋台骨だ。日本が自動車など工業製品で関税撤廃を求める中、利害が交錯する複雑な貿易交渉の結果、トランプ政権として「米国に製造業を取り戻す」という看板に傷をつけられない事情があった。
トランプ氏は今月中旬のペンシルベニア州の演説でも、日系自動車メーカーの対米投資を歓迎しながらも、「日本との貿易赤字は巨大だ」と不満を表明した。6月下旬まで決裂の可能性すらあったと関係者が振り返る日米交渉で、米国が厳しい姿勢を転換させたのは、対日妥結が、輸出増を目指す農畜産業者らにアピールする格好の材料になるとの目算があったためだとみられる。
来月の署名というタイムスケジュールは、9月下旬の国連総会に合わせた次回の首脳会談での合意を想定したものだ。実現すれば、日本側は、秋の臨時国会で批准の手続きを取ることも視野に入る。
だが、全体のバランスが崩れ日本にとって不利な状況になれば、「国会で承認されない事態」(政府関係者)となる。自民党議員からは「早期の妥結よりも、日米ともにウィンウィンになることが重要」との声も上がっている。(飯田耕司、ビアリッツ 塩原永久)
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