1984年に滋賀県日野町で酒店経営の女性(当時69)が殺害され、店の金庫が奪われた「日野町事件」で、大阪高検は6日、強盗殺人罪で無期懲役が確定した阪原弘(ひろむ)・元被告の再審開始を認めた大阪高裁決定を不服として特別抗告した。受刑中に病死した元被告に代わり、遺族が求めた「死後再審」の可否は、最高裁が判断することになった。
再審開始を認めた高裁決定を、最高裁が覆した例は極めて少ない。一方、無期懲役や死刑の確定判決に対し、最高裁が死後に再審開始を認めれば戦後初めてとなる。判断が注目される。
確定判決によると、女性は84年に行方不明になり、翌85年に町内で遺体と金庫が見つかった。元被告は県警の任意の取り調べに自白し、88年に逮捕。公判で無罪を主張したが、一・二審は、元被告が遺体などの発見現場に警察官を案内したとされる「引き当て捜査」の結果を重視して無期懲役判決を言い渡し、2000年に最高裁で確定した。
2月27日の高裁決定は、遺体を巡る引き当て捜査の写真のネガには、遺体に見立てた人形を持つ写真と持たない写真があるのに、人形を持って再現したような写真ばかりが捜査報告書に載っていると指摘。元被告がスムーズに案内できず、時間がかかったと推認されるとし「捜査官による誘導の可能性を含めて疑問が生じた」と判断した。
その上で、元被告のアリバイを巡る知人の妻の証言などを「無罪を言い渡すべき新証拠」と判断。再審開始を認めた18年の大津地裁決定を支持し、検察側の即時抗告を棄却した。
大阪高検の小弓場(こゆば)文彦次席検事は「高裁決定は承服しがたく、特別抗告を申し立て適正な判断を求めることとした」とのコメントを出した。元被告の長男の弘次さん(61)は「35年にも及ぶ長い年月、無実だと訴えてきた。本当に悔しい。(85歳の)母が生きているうちに再審無罪を家族みんなで喜びたい」と訴えた。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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