旧優生保護法の下で不妊手術を強いられたのは憲法違反だとして、聴覚障害のある70代夫婦が国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は12日、国に1650万円の賠償を命じた。斎藤毅裁判長は旧法を違憲と判断し、手術から20年で賠償の請求権が消える除斥期間を適用することは「著しく正義・公平の理念に反する」と述べた。
全国12地裁・支部で起こされた同種訴訟の11件目の一審判決となり、9件目の違憲判断。4件目の国賠命令となる。
原告は名古屋市に住む尾上敬子さん(74)と夫の一孝さん(77)。これまでは仮名で訴訟に臨んできたが、判決を前に名前を公表した。国に計2970万円の賠償を求めていた。
判決などによると、2人は1975年に結婚し、同年に母からの強い指示で敬子さんが不妊手術を受けた。医師からの事前説明や、敬子さんの同意はなかった。
判決は、旧法について幸福追求権などを定めた憲法13条や、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反すると判断。その上で「国は遺伝性の疾患などのある者は劣った者で増加すべきでないとの認識が広がることを促進した」と述べ、国が原告の賠償請求権の行使を困難にしたと指摘。除斥期間の適用を制限して、国に賠償を命じた。
こども家庭庁は「判決内容を精査し、関係省庁と協議した上で適切に対応したい」とのコメントを出した。(高橋俊成)
「原告の思い届く」 差別あってはならないと訴え
「障害者は子どもを作ってはいけないという本当に悪い法律だ。差別はあってはならない」。旧優生保護法をめぐる訴訟で、旧法を違憲と断じた12日の名古屋地裁判決。約半世紀前に不妊手術を強いられた原告夫婦は判決後、手話通訳を介してこう強く訴えた。
「原告の思い届く」「早期全面解決を」。判決言い渡し後、雨上がりの名古屋地裁前に原告勝訴の旗が掲げられ、支援者らは手をたたいて喜び合った。その輪の中心で、原告の尾上敬子さん(74)と一孝さん(77)は涙を流しながら抱き合っていた。
敬子さんが不妊手術を強制されたのは2人が結婚した1975年。敬子さんも一孝さんも、子どもを持ちたいと望んでいた。だが、敬子さんには先天性の聴覚障害があり、母親からは「生まれてくる子どもの耳が聞こえなければどう育てるのか」などと言われ、妊娠に強く反対された。当時、生活を支えてくれていた母の指示に逆らえず、手術を受けた。
差別や偏見を恐れ、手術のこ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル