世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の元信者が教団側に過去の献金などの返金を求めた結果、一部や全額が返金された事例が民事裁判以外に少なくとも46件あることが、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)への取材でわかった。元信者が求めた返金は、教団が2009年に出した「コンプライアンス宣言」以降に献金するなどした分を含んでいた。
教団の高額献金や印鑑などの物品販売をめぐっては、教団側の使用者責任や不法行為が22件の民事裁判で認定されているが、今回の46件は裁判になっておらず、これとは別。教団が民事裁判以外にも、元信者との間で、コンプラ宣言後の行為でも複数のトラブルを抱えていたことになる。
教団をめぐっては、信者による不安をあおった印鑑販売などが09年2月に刑事事件化した。教団は翌3月までに「先祖の因縁等を殊更に結びつけた献金奨励・勧誘行為をしない」「経済状態に比して過度な献金とならないよう配慮する」などのコンプラ宣言をし、信者らを指導してきたと説明している。
全国弁連は昨秋、教団によるコンプラ宣言と実態がかけ離れていることを示そうと、各地の所属弁護士を通じて元信者が09年3月以降の献金などの返金を求めた事例を集計。その過程で、教団側と裁判外で和解した事例が、少なくとも46件(46人)あることがわかった。
46人が入信した時期は1976年ごろ~2016年8月で、うち少なくとも9人はコンプラ宣言よりあとの10年以降の入信だった。返金を求めたのは、入信して以降の合計14億円余りの献金や物品購入など。このうち3割超の計約4億7千万円分が、09年3月以降だった。交渉の結果、教団側は全額や一部について返金に応じたという。全国弁連は「それぞれの事情が異なり、返金額がひとり歩きするおそれがある」などとして返金された額や割合は明らかにしていない。
文部科学省などによると、1994年以降、教団の使用者責任や不法行為が認められた民事裁判は少なくとも22件ある。このうち3件は09年3月以降の教団側の行為も含んで賠償責任が認められている。政府は、教団の解散命令請求も視野に、コンプラ宣言が守られているかどうかについても調べている。
民事裁判以外の元信者との返金をめぐるトラブルについて、教団は「現在進行中の質問権にも関わる内容のため、回答は控える」としている。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル