東京駅の目の前。今年で開業20年を迎えた「丸ビル」など丸の内エリアで10日、クリスマスに向けたイルミネーションが始まった。
帰宅途中に立ち止まるスーツ姿の男性、ベンチに座って寄り添う恋人、ポーズを決めて写真を撮り合う若い女性たち。街路樹に瞬く光を誰もが見上げている。
神奈川県に住む里中愛理さん(25)は2年前からこの街で働く。おしゃれで、きれいで、「どこを撮ってもインスタ映え」。就職先が決まったときうれしくて、友だちにも自慢した。
ただ、母親から聞く「丸の内」はまったく異なっていた。
同居する母親の洋子さん(60)は35年前まで、この街で働いていた。長野県出身。大学卒業後、一般職で採用された。就業時間は午前8時から午後5時。入社当時は「東京の中心で働くことに誇りを持っていた」。それでも、次第につまらなくなっていく。
「遊ぶ所なんてなかった。夕方以降は『ゴーストタウン』と言われていて、同僚と競い合うように、帰っていました」
丸の内が、「インスタ映えタウン」に生まれ変わったのは20年前、丸ビルの建て替えがきっかけだ。
1890年。陸軍の練兵場だった荒れ果てた草むらを、三菱社(現・三菱グループ)の岩崎弥之助氏が買い上げて以来、丸の内は「オフィス街」の先頭を走り続けてきた。
「トラでも飼うさ」 草むらだった丸の内
当時、岩崎氏は「竹を植えて…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル