国内外の心臓病の子供たちを救う「明美ちゃん基金」(産経新聞厚生文化事業団運営)の医療団は先月22日から約1週間にわたりミャンマー・ヤンゴンの国立ヤンキン子供病院で、現地スタッフに日本の医療技術を伝えながら心臓病に苦しむ計46人の子供たちを治療した。今回は3人の看護師も帯同。現地の術後管理のスキル向上が確認された一方、さらなるレベルアップに向けた課題も浮かんだ。(吉国在、吉沢智美)
手術を終えた患者がケアを受ける集中治療室(ICU)。あるベッドでは、キン・キン・ラさん(13)が看護師とともにミャンマーの民族衣装を着た女性の絵を描いたり、風船を膨らませたりしていた。一般病床へ移るための遊びを兼ねたリハビリだ。
生まれつき4つの心臓病がある「ファロー四徴症」を患っていたキンさんは、昨年9月に別の海外医療チームの手術を受けたが完治しなかった。今回、医療団による手術で苦しさがなくなるまでに回復。キンさんも「息がしやすくなった」と笑顔を浮かべる。
今回医療団に参加したのは桜井真秀子(まほこ)、権守礼美(ごんのかみ・あやみ)、小岩井良子の各看護師。渡航中は現地看護師とともに術後管理などにあたった。
風船を使ったリハビリは現地看護師のアイデアだ。「呼吸の訓練に風船はいい試み」と初参加の桜井さん。小岩井さんも、「基本的な知識やスキルがあるだけでなく、患者の回復のためにできることを実践していた」と振り返る。
「呼吸器をつけているときの患者の体勢は?」「チューブが詰まったらどうしてるの」。ICUでは現地看護師から日本式の術後管理に質問が相次いだ。ミャ・スー・エー看護師(31)は「海外のチームから看護の方法を学び、現状に合うものを選んで実践している」と説明する。
課題もある。約50人を収容する心臓外科病棟で患者のケアにあたる看護師の数はわずか10人。慢性的な人手不足が続き、術後管理には粗さも目立つ。
その一つが、正常値にもかかわらず鳴り続けていた異常を知らせるモニターのアラームだ。重篤な患者はわずかな変化を見逃すと致命的になりかねず、より丁寧なケアが必要になる。
ただ、強引に変えても意味はない。大事なのは、本人たちの理解と納得だ。
「次のステップへ進む準備は整いつつある」と権守さん。「難しい症例の患者を受け入れ、必要性を本人たちが感じる中で術後管理のスキルを高めていってくれれば」と期待を込めた。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース