おぼつかない足取りの幼子を見守る父親、雪の中を走る路面電車……。昭和の市民の暮らしが映る8ミリフィルムを題材にした美術展「記憶のミライ」が、7月11日から札幌文化芸術交流センターSCARTS(札幌市中央区)で開幕する。33人が提供した247本のフィルムから編集した映像を4方向のスクリーンに同時投影。時空を越えた映像体験が楽しめそうだ。
札幌・狸小路商店街にあるミニシアター「シアターキノ」代表で映像作家の中島洋さん(70)の企画。市民参加型アートプロジェクトとして、今春8ミリフィルムの提供を広く呼びかけていた。応募された映像は約45時間分。1950年代から80年代に至る様々な生活の場面が集まった。
中島さんがもともと考えていたのは、かつての札幌の歴史や文化を伝える映像を題材に今の社会を考える硬派なコンセプトだった。だが届いた素材に目を通した中島さんは、子供の成長を記録したホームビデオ、一つ一つの家族の小さく幸せな世界を記録した映像により心引かれたという。ビデオ会議風に1画面にたくさんの情報を盛り込む編集はやめ、「大切な時間の記録」をありのまま伝える方針に転換した。「古い映像にあるのは懐かしさだけではない。僕らがこの先も生きていくための知恵の材料になればいいな、と思う」と中島さんは話す。
会場では、部屋のように四方を囲んだスクリーンにそれぞれ違う短編映像を繰り返し投影する。映像の長さが異なるため同時再生される場面は徐々にずれ、訪れたタイミングによって異なった映像の組み合わせを体験できる。「人生が一期一会であるように、百人が百通りの映像と出会える」と中島さん。
20日まで、午前11時~午後7時、入場無料。11日午後6時からは中島さんらによるトークイベントが会場内で行われる(先着順入場、20人程度)。問い合わせは011・271・1955(SCARTS)。(戸田拓)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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