終盤戦に突入した参院選。街頭演説に足を止め、耳を傾ける有権者もいるが、全ての候補者の話を聞くことは難しく、テレビや新聞などで語られるのも各党の考える重要政策のごく一部だけ。中でも投票にあたって参考となると思われるのが、いわゆる“マニフェスト“と呼ばれる選挙公約集だが、これも「見ていない」「あんまり当てにならない」という声は多い。
選挙公約の研究をしている早稲田大学マニフェスト研究所の中村健事務局長は「マニフェストという言葉が出てきて民主党政権に代わるまでは、具体的な数値目標やスケジュール、財源などを明記しましょう、ということで書かれていたものが多かった。しかし2010年あたりから少しずつ抽象的な、過去の“選挙公約“に戻ってしまったのではないか。また、あれやります、これやります、ということは語られているが、私たちの国は、暮らしはどうなっていくのか、というゴールの姿が示されていないのも共通点になっている気がする」と指摘する。
また、選挙プランナーの松田馨氏も「私が初めて選挙に関わった2006年当時はスローガンだけではなく、期限・財源・手法を明記し、有権者が評価できるものだと言われていたし、新人候補でも一生懸命に書いていた。2009年の民主党の政権交代の時にはマニフェストのピークがきて、街頭で冊子をくれと言われ、何度も増刷をした。しかし書かれていたことが達成できなかったとなった時、マニフェストそのもの信用が落ち、マニフェストというワードすらあまり使われなくなった。同時に政策集というような言い方になり、中身も抽象的になってきている」と振り返った。
実際、各党の公約集には、「進めます」「目指します」「一層加速します」「推進します」「複数の」「~%程度」といった、いわゆる“マジックワード“が数多く並ぶ。
中村氏は「いずれも前向きで聞こえがいい表現だが、幅が広すぎるし、少しごまかしも入ってくる。自分たちの首を締めない程度に前向きに表現した、そんな意図も読み取れると思う。ゴールまでの途中経過を示しておき、選挙後、それがどこまで進んだのか、例えば1年、あるいは2年といった時期にきちんと説明をするとうことが行われると分かりやすくなるのではないか」、松田氏は「本来のマニフェストの目的は説明責任を果たすということ。社会情勢の変化や、反対勢力がいることもあって達成できなかったのであれば、なぜ達成できなかったを説明した上で、次の選挙でもう一度掲げる“マニフェストサイクル“でいい。しかし達成できないと“公約違反“と言われ、すごくマイナスな材料として捉えられてしまう。そのリスクを政党や候補者が考え、どうしてもぼかした表現にされるようになっていった」と説明した。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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