ほぼ全ての政党が引き上げを掲げる
低賃金で生活に困窮する北海道内の人たちが、21日投開票の参院選で、収入の基準となる「最低賃金」を巡る議論に注目している。ほぼ全ての政党が最低賃金の引き上げを掲げるが、実現性は不透明で、低賃金や非正規雇用など不安定な労働環境への不安は根強い。「一日でも早く、困窮から抜け出せる政策を実現してほしい」。共働きに比べ家計負担が重いひとり親世帯も、1票に思いを託す。
「たまに外食、ほとんど貯金できない」
日中に飲食店で8時間働き、夜は24時間営業のスーパーで勤務。午前3時に就寝し、数時間後に再び飲食店へ―。二つの非正規の仕事を掛け持つ札幌市白石区の女性(29)は「いくら働いても安心できない」と、うなだれる。
どちらの時給も道内の最低賃金835円とほぼ同じ。1日最大14時間働いて、月収18万円。「家賃に光熱費、携帯代。友人とたまに外食に行くと、ほとんど貯金できない」と言う。
以前はレンタルビデオ店でも働いていたが、体調を崩して5月に辞めた。飲食店の仕事は兼職禁止だが、スーパーの深夜勤務は時給が最低賃金より45円高く、「家族の介護がある」と偽って飲食店の夜のシフトを外れ、スーパーで働く。女性は「一つの仕事で生活したい。最低賃金を上げてほしい」と訴える。
「早期に全国平均千円」「5年以内に1300円」
参院選では最低賃金について、与党は「2020年代早期に全国平均千円」、野党は「5年以内に1300円」などと掲げる。現行の全国平均は874円。各党の公約の実現は簡単ではない。
低賃金で働く人の多くは、雇用環境が不安定な非正規雇用だ。道内は18年で89万人。労働者全体の約4割を占め、多くが生活への不安を抱えている。
「今の給料では1人暮らしも、結婚もできない」。札幌の清掃会社で家庭ごみを収集する非正規社員の男性(21)は嘆く。実家から通勤して、収集車を1日約80キロを走らせ、約14トンのごみを回収する。日当は最低賃金水準の約7千円で、1年間働いても50円しか上がらなかった。慢性的な人手不足で負担は一向に減らないが、年収は正社員より70万円以上低い。男性は「同じように働いているのに給料は大きく違う。非正規から抜け出せる政策の実現を」と願う。
「先のことを考える余裕はない」
ひとり親世帯も、不安定な生活から抜け出せずにいる。10代の子ども4人を育てる札幌の看護師の女性(46)は、夫の暴力で6年前に離婚した。現在の一家の手取りは月22万円で、離婚前の半分。長男以外は中学校の修学旅行費用が捻出できなかった。参院選で注目される年金問題。将来不安についての議論は大切だと思っているが「先のことを考える余裕はない」のが実情だ。
ひとり親でも、困窮していても、支援がきちんと行き届く社会を実現してもらいたい―。21日は、19歳の長男と一緒に投票所に行くつもりだ。(下山竜良、岩崎あんり)
北海道新聞社
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