23日に名古屋国際会議場(名古屋市熱田区)で開かれる全日本吹奏楽コンクール高校の部に、愛知県内から光ケ丘女子(岡崎市)と愛工大名電(名古屋市千種区)が出場する。普段から定期演奏会などでホールを使用してきた両校にとっても特別な舞台だ。本番を前に練習に励む両校を取材した。
光ケ丘女子高校「希望に向かう12分間を」
ペル・アスペラ・アド・アストラ(困難を乗り越えて星々へ)――。
ラテン語が由来の「アド・アストラ」(長生淳作曲)が光ケ丘女子の自由曲だ。「タイトルと曲の美しさにひかれた。成長した先に希望、ゴールがあるんだということを音楽を通して生徒たちに知ってもらいたかった」と顧問の日野謙太郎教諭は選曲の理由を話す。
大会の中止、音源審査や無観客での大会、今年も新型コロナウイルスの感染で出場メンバーが欠けないように生活するなど、3年生はコロナ禍が重なった高校生活を送り、活動を制限されることもあった。
だからこそ、「アド・アストラ」は自分たちにぴったりな曲だと感じる。
杉本成南(せいな)部長(3年)も「コロナ前の状況に戻りつつあり、希望が見えて、曲は私たちが生きている現代に当てはまっている」という。
現代曲ならではの複雑さがあるが、各自でスコアを読み込み、互いの音の動きを整理しながら音づくりを進める。「演奏すればするほど、曲の複雑さが理解できていって、半年以上経った今でも新たな発見があって楽しい。達成感のある曲」とトレーナーの上田ほのかさん(3年)は話す。
今大会は、現代音楽作品が選ばれる課題曲Vが最後になる。ほとんどの大会で取り組み、先輩たちが大切にしてきた。今回の課題曲Vは《憂いの記憶―吹奏楽のための》(前川保作曲)。
「先輩がつなげてくれた課題曲V。なくなってしまうけれど、あってよかった。かっこよかったんだと思ってもらえる演奏がしたい」と羽貝海佑(みう)副部長(3年)。杉本部長も「記憶に残るいい演奏がしたい」と話す。
憂いの記憶のアンサーソングは「光の海」だということを知り、憂いから喜びへといった意味も込められているという。
山川陽香副部長(3年)は「憂いからアド・アストラへ、12分で希望に向かっていく演奏を見せたい」。
愛工大名電高校「新しい音楽をつくる攻めの姿勢で」
今大会の出場校のうち最多44回目の出場となる愛工大名電にとって、名古屋国際会議場は定期演奏会やクリスマスコンサートを開いてきており、どの学校よりもなじみがある。
そんな会場でも、年に一度の特別な舞台に「また違った空気で、とても緊張する」と武藤りさ部長(3年)はいう。コロナ禍で関係者だけだった昨年とは違い、今回は入場客数の制限がない。「いい緊張感で、プラスにとらえている。みなさんに届くような演奏をしたい」
自由曲は「森の贈り物」(酒井格作曲)を演奏する。森の精や生き物が登場する情景が描かれた曲で、トランペットを奏でる武藤部長は、コルネットの独奏も担当する。顧問の伊藤宏樹教諭は「難曲で、スタープレーヤーがいるからこそできる。演奏したときに合っていると感じた曲だった」と選曲の理由を話す。
全国大会の本番2週間前にも各自でストーリーを練り上げ、「例年よりも新しいものを常につくっていこうという気持ちが強い」と武藤部長。自身の独奏も、毎日うたいどころを変化させているという。「本番まで新しい音楽をつくる攻めの姿勢で取り組みたい」と話す。(小原智恵)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル