海をイメージした青色の看板に「34M」と書かれた白い旗がデザインされている。
南海トラフ地震で国内最大級の34メートルの津波被害が想定される高知県黒潮町で、スイートポテトのタルトケーキの缶詰の開発が進んでいる。
きっかけは、2011年3月にさかのぼる。町職員で防災担当だった友永公生さん(51)は、東日本大震災の発生直後、宮城県気仙沼市に入った。カツオ漁で縁が深く、関係者の安否確認と物資支給のため、避難所を巡った。
被災者の食事にも立ち会った。カップ麺などの支援物資から地元食材を使った炊き出しに変わると、被災者のこわばった表情が少しずつ緩んだのが見えた。命をつなぐ食事も必要だが、心を温める食事はもっと必要だと感じた。
3年後、町は新たな地域産業と雇用の場として、第三セクターの「黒潮町缶詰製作所」を設立した。缶詰は長期間備蓄できて非常食になる。南海トラフ地震で被災地となることを想定し、すべての製品を被災者が食べられるよう食物アレルギーの原因となる物質「7大アレルゲン」を使わないようにした。
また、備蓄用にとどまらず、味はもちろん、普段から食卓に置いて味わってもらえるよう缶をマスキングテープ風に装飾するなど、「グルメ缶」として売り出している。
最新作は、県特産の「土佐あかうし」の缶詰。牛すじ、厚揚げ、とうふ、こんにゃくの具に1時間以上煮込んだスープ、表面に赤いタカノツメをまぶして鍋を再現した。これまで30種類以上を開発し、2年前には売り上げが1億円を突破したという。
だが、東日本大震災の被災地の経験から思い立った「スイーツ缶」の開発は胸の内に秘めたままだった。
和菓子のようかんの缶詰は商…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル