東京大副学長を務めた吉見俊哉さん(66)が定年を迎え、東大を退職するのを前に3月19日、「最終講義」に臨んだ。「東大紛争1968―69」と題し、大学紛争の舞台となった東京・本郷の東大安田講堂内の演壇に立ち、無観客でライブ配信した。当日は約1200人が視聴。録画された動画は約8万回視聴された。都市論やメディア論を専攻した社会学者は、なぜ「東大紛争」を最終講義のテーマに選んだのか。
「講義の形式を取ったが、厳密にいうと一人芝居です」。学生時代は演劇に熱中し、初の著書「都市のドラマトゥルギー」で都市を演劇の視点から論じた吉見さんはこう説く。「退職にあたり、入学から半世紀近く通った東大との関係に決着をつけたいと考えました。東大紛争は戦後の大学改革の転換点となり、私の研究者生活に大きな影響を及ぼした。象徴的な場所の安田講堂を舞台に、歴史の語り手となって4幕劇を演じることにしたのです」
東大紛争は68年、学生処分をめぐる医学部内の対立が発端。6月の機動隊導入をきっかけに全学で学生がストライキに突入し、安田講堂など校舎を占拠した。翌69年1月、安田講堂を占拠する学生を機動隊が排除し、入試が中止された。
吉見さんは大学院情報学環長や副学長として大学行政にかかわり、大学論に関する著書も多く出版した。「戦後日本が大学改革に取り組んだ時期は2回あった」とみる。
最初は敗戦直後の45~57…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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