福島県富岡町にある2席だけの理容店。1月の休日の朝、貝塚実(みのる)さん(59)が革張りの茶色い椅子に腰かけた。月に一度、北に約30キロ離れた福島県南相馬市の自宅から通うのには、わけがある。
「忙しくしてる?」
- 特集「生きる、未来へ 東日本大震災10年」
- 3月11日、発生から10年となる東日本大震災。愛する人を失った悲しみ、住み慣れた土地に戻れない苦しさ……。さまざまな思いを抱え、歩んできた3家族を通して、被災地のこれまでを振り返る。
店主の草野倫仁(ともひと)さん(25)が「そうっすね。おかげさまで」と応じた。店内は灰色が基調の落ち着いた雰囲気。鏡に映る笑顔が、バリカンを手にすると引き締まった。
手際よく刈られる髪。実さんは目を閉じ、次男の晃太さんの顔を思い浮かべた。「晃太、倫君は頑張っているぞ」。2人はサッカーのチームメートだった。
10年前の3月11日。中学の…
2種類
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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