奈良市の小学1年生の有山楓(かえで)さん(当時7)が誘拐、殺害された事件から17日で19年が経った。楓さんが通っていた市立富雄北小学校ではこの日、事件を改めて振り返り、命の重さや大切さを考える「いのちの集会」があった。父親の茂樹さんは手記を公表した。
この日朝、同校体育館に1~6年の児童や保護者、地域住民ら448人が集まった。一堂に会しての集会は、新型コロナウイルスの影響もあり、4年ぶり。
冒頭、後藤誠司校長が「悲しいけれども、いつまでも忘れてはならない、とても大切な日。みなさんには人を傷つける人にも、傷つけられる人にもなってほしくない」と語った。
舞台上には、かつて楓さんが使っていた机の上に、当時の校長が遺族に贈ったという鐘が置かれた。児童は楓さんが亡くなった年齢にちなんで7回鳴らし、全員で黙禱(もくとう)した。
児童代表のあいさつでは、6年の女子児童が「今この瞬間を生きていることを大切にしなければいけないと考えた。両親からもらった命、家族に感謝し、精いっぱい生きようと思った。楓さん、あなたはみんなの心の中で生きています」と話した。
この日までに、同校では各学年で「いのちの授業」があった。児童たちは生きることや命について考え、各学年で学んだことをもとに、舞台で「命を大切にし、誰にでも優しい気持ちで生活します」などと宣言した。(仙道洸)
楓さんの父・茂樹さんが手記
楓が被害に遭った事件から19年が経ちました。
もう19年も過ぎたという気持ちとまだという気持ちです。
あの日楓が歩いて帰っていた道を下の娘と今年初めて歩きました。楓の手掛かりを探しながら歩いた道はとても長く感じました。早く自転車に乗りたかっただろうし、早く母親の待つ学校へ向かいたかったはずです。楓を守ってやれなかった後悔だけは今も変わることもなく、時間だけは過ぎていきます。
楓は7年という短い時間をどんな思いで生きてきたのだろうか、毎日を楽しく過ごしたのだろうか、やりたいことやできることはちゃんとできていたのか楓に聞くことはできません。それでも今もたくさんの方が楓を覚えていてくれることは私にとって楓が7年間をしっかり生き抜いてきた証だと思います。みんなの思いの中で楓はちゃんと26歳へ成長しています。そして今もみんなを見守るために楓は飛び回っているのだと思います。
悲しみや苦しみは時間が解決はしてくれません。このような思いを誰もしないためにも、子供たちが被害に遭わない社会を心から願います。
有山茂樹
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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