岩屋毅防衛相とエスパー米国防長官との初会談は、米国が中東・ホルムズ海峡での航行の安全をめぐり各国に参加を呼びかける「有志連合」について、日米の防衛トップが初めて意見を交わす場となった。今月24日からフランスで開かれる先進7カ国(G7)首脳会議では中東情勢も主要議題になるとみられ、岩屋氏は参加の判断に時間をかける日本の立場に理解を求めた。ただ、早期の連合結成を目指す米側の理解が得られるかは見通せない。
原油輸入の9割近くを中東に依存している日本にとってホルムズ海峡は重要なシーレーン(海上交通路)だ。中東地域の緊張が高まる中で、日本は何も対応しないという選択肢は取りにくい。
ただ、イランと対立する米国主導の有志連合への参加は、日本と友好関係を保つイランには「敵対行為」と映り、かえってエネルギー安全保障を損なうことになりかねない。
米国と緊張関係にあるロシアは「ペルシャ湾での集団安全保障の構想」と題する政策文書を発表し、イランや中国などに「反テロ連合」の形成を呼びかけている。有志連合に対抗する狙いは明らかで、貿易摩擦で米国との対立が深刻化する中国は「協力を強化する用意がある」と賛意を示した。こうしたロシアや中国の動きも日本の判断を難しくしている。
日本は自衛隊の独自派遣も検討しているが、「期限を切られているわけではない」(外務省幹部)として、米国への回答は急がない方針だ。エスパー氏に日本の立場を説明した岩屋氏は会談後、記者団に「われわれの考え方を受け止めてもらったと考えている」と述べた。
しかし、トランプ米大統領はかつて日本や中国を名指ししながら、「なぜ米国が他国のために無報酬で航路を守っているのか」と不満を表明したこともある。ポンペオ米国務長官も先月29日、ワシントン市内での講演で、「民間の海運を守るには各国からの支援が必要だ」と述べ、関係国の有志連合への参加を重ねて求めた。
エスパー氏は岩屋氏との会談に先立つ安倍晋三首相との会談では、中東地域の問題に一切触れなかった。政府高官は「イランとの関係があるという日本の立場をわかっている」と解説するが、米政府が日本側の説明をどこまで受け入れるかは不透明だ。(力武崇樹)
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