郡山市の飲食店「しゃぶしゃぶ温野菜郡山新さくら通り店」で7月下旬に起きた爆発事故で、現場周辺で負傷者を救出するなど人命を救ったとして、郡山地方広域消防組合は近隣の企業など4事業者に感謝状を贈った。この事故では周辺の建物304棟が被害を受け、1人が死亡、19人が重軽傷を負った。
感謝状を贈られたのは、通信設備会社「ニノテック」とニノテックの協力会社「公栄通信」、特別養護老人ホーム「イル・ヴィラージュ」、東邦銀行新さくら通り支店。それぞれ複数の人たちが協力するなどして、被災した建物から負傷者を安全な場所に搬送。応急手当ての資器材を持ち寄り、避難誘導などをした。
同組合管理者の品川万里・郡山市長は「自ら被災され二次災害の不安がある中、危険を顧みずに率先して負傷者を救出、応急手当てを施されるなどの行為、行動に深く敬意と感謝を申し上げます」と評した。
爆発した飲食店と道路を挟んで向かい側にある東邦銀行新さくら通り支店。営業開始の約3分前、菊地大樹支店長(49)ら行員33人が開店準備を進める中、突然の衝撃と爆風が2階建ての建物を襲った。
店舗正面のガラス扉や道路に面した窓ガラスはすべて吹き飛んだ。入り口のATM(現金自動出入機)スペースには4人の来店客。顔面を複雑骨折した40代女性は出血がひどく、女性行員がタオルで止血しながら救急隊が来るまで抱きかかえ続けた。残る3人も額から出血したり左腕などに切り傷を負ったり。行員3人もけがをした。
けが人の救護と速やかな誘導避難。「今思い返しても職務を全うできていたか思い悩む時がある」と菊地支店長。重症の女性は先月末に退院した。支店は事故当時のままだが、「少しずつ元の生活が戻ってきている気がします」と話す。
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爆発時、公栄通信の佐藤好春さん(55)はニノテック本社で電話工事に行く準備をしていた。衝撃とともに室内のガラスが割れ、壁が吹き飛んだ。一緒にいた仲間はけがを負い、「何が起きたのか」と外に出ると、新さくら通りには通りにがれきが散乱していた。
骨組みだけの飲食店のガスボンベからガスが噴き出していた。「危険だ」と思ったが、大破した新聞販売店に顔などから大量に出血した40代女性が男性に抱えられているのが見えた。
「助けないと」ととっさに思い、ニノテックの社員と駆け寄った。社員が女性を安全な場所まで搬送するのを手伝い、佐藤さんはニノテックに戻って毛布やタオルを探し、女性の救護現場に急いだ。
感謝状を受け取った後、佐藤さんは「当たり前の行動をしただけだが、大けがをした女性が助かってよかった」と振り返った。(見崎浩一)
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〈「しゃぶしゃぶ温野菜郡山新さくら通り店」爆発事故〉 郡山市島2丁目の同店で7月30日午前8時57分ごろ、爆発事故が起き、改装工事のため店内に入った現場責任者の男性(当時50)が死亡し、周辺の20~80代の男女19人が重軽傷を負った。郡山消防本部によると、建物の被害は周辺の数百メートルに及び、304棟(11月18日現在)で確認された。県警は店の厨房(ちゅうぼう)内で見つかったガス配管の腐食箇所からガスが漏れ、何らかの理由で引火、爆発した可能性が高いとみて、業務上過失致死傷容疑で調べている。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル