朝日新聞社がジェンダー平等宣言 報道や事業で発信

 朝日新聞社は1日、「朝日新聞社ジェンダー平等宣言」を発表しました。ジェンダーは、社会的・文化的に作られる性差で、性別による役割分担の意識、社会の仕組みをいいます。本社は、報道や事業を通じた発信と、その担い手のジェンダー平等をめざします。

 日本は、先進国では他に類を見ないほど男女の格差が開いています。すべての国連加盟国が2030年までの達成をめざすSDGs(持続可能な開発目標)に賛同するメディア企業として、17分野の目標の一つ「ジェンダー平等の実現」に向け、具体的に取り組みます。まずは、朝刊掲載の「ひと」欄と本社主催の国際シンポジウム「朝日地球会議」を、達成度を測る指標とします。

全文

 すべての国連加盟国が2030年までの達成をめざすSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)。17の目標の一つ、「ジェンダー平等の実現」に向けて、私たちは「朝日新聞社ジェンダー平等宣言」を発表し、取り組んでいきます。

1.朝日新聞紙面や朝日新聞デジタルで発信するコンテンツは多様性を大切にします。取材対象や識者を選ぶ際には、性別などの偏りが出ないよう心がけます。朝日新聞の朝刊にほぼ毎日掲載する「ひと」欄をその指標とし、年間を通じて男女どちらの性も40%を下回らないことをめざします。

2.国際シンポジウム「朝日地球会議」をはじめとする、朝日新聞社が主催する主要なシンポジウムの登壇者は、多様な視点から議論ができるように、関係者の理解を得ながら、男女どちらの性も40%を下回らないことをめざします。

3.朝日新聞社は、女性管理職を増やし、管理職に占める女性比率を現状の約12%から、少なくとも倍増をめざします。男性の育休取得率を向上させます。性別を問わず、育児や介護をしながらでも活躍できるように働き方を見直し、人材の育成につとめます。

4.ジェンダー平等に関する社内の研修や勉強会を定期的に開き、報道や事業に生かしていきます。

5.ジェンダー平等に関する報道をまとめた冊子を定期的につくり、教育現場や企業で幅広く活用していただけるようにします。

6.宣言内容の達成度や実施状況を定期的に点検し、公表します。

2020年4月1日

朝日新聞社代表取締役社長 渡辺雅隆

 朝日新聞社は1日に発表した「ジェンダー平等宣言」で、報道や事業、組織のジェンダーバランスについて、今まで以上に意識して取り組むことにした。国際的にみても日本の男女格差が大きいなかで、多様な意見や視点を読者に届けるよう努めることで、これまでの価値観や働き方を足元から見直すきっかけにする。

 世界経済フォーラムが毎年発表するジェンダーギャップ(男女格差)ランキングで、日本は低迷している。昨年は153カ国中121位で、過去最低を記録した。衆院議員に占める女性の割合は1割程度、上場企業の役員は5%程度と、意思決定層に女性が極めて少ないだけでなく、家事や育児の時間が女性に偏るなど、さまざまな格差が存在する。

 朝日新聞は従来、女性の地位向上をめざして報道を続けてきた。2017年からは3月8日の国際女性デーにあわせ、男女格差を考える企画「Dear Girls」を展開してきた。

 表現については、02年作成の「ジェンダーガイドブック」を17年に改訂。記事や写真、見出しなどが性別の固定観念を助長していないか、よりバランスのとれた表現はないか、見直した。

 女性差別に「ノー」の声を上げる動きは世界で加速している。18年から19年にかけては、性被害に抗議する#MeToo運動のうねりが起き、日本でも医学部入試での女性差別や、性犯罪被害などが次々に明らかになった。

 さらに各界で男女の割合を「50:50」(フィフティ・フィフティ)にしようという動きが拡大。メディアでも、英国の公共放送BBCが出演者の男女比を平等にしようというプロジェクトに取り組んでいる。米国のニューヨーク・タイムズは「ジェンダー・エディター」を創設し、報道のあり方をチェックしている。

 ジェンダー問題を取材しながら、朝日新聞の記者たちも自らの発信や社内の態勢について考える場面が増えてきた。現場から声を上げ、部門横断で活動する社内の「女性プロジェクト」が核となって各部門の声を聞き、今回の宣言に至った。

 朝日新聞は、記事や主催シンポなどに登場する人が男性に偏ることがないように、高い専門性や独自の視点をもつ女性をさがす努力を、これまで以上にしていく。女性管理職比率は12・0%で、現在の女性社員の数からかけ離れた数字にはできないため、2030年までに少なくとも倍増をめざす。

 宣言や取り組みを実効性のあるものにしていくため、朝刊掲載の「ひと」欄や、主催シンポ「朝日地球会議」で「男女どちらの性も40%を下回らないことをめざす」との目標を掲げ、女性比率を読者に報告していく。19年の1年間で「ひと」欄で紹介した人のうち女性の割合は28・4%。19年の地球会議の登壇者は67人中女性は24人、35・8%だった。

 社内からは「数値目標をつくることで、記事や事業に制約がうまれないか」との声もあがったが、従来通り質の向上に努めながら、ジェンダーバランスにより配慮していくこととした。

 渡辺雅隆社長はこの日の入社式で「性別や障害の有無、国籍や人種、宗教の違いに関係なく、誰もが活躍できる社会、多様な価値観を認め合う社会が私たちの理想。今回の宣言は、足元から取り組んでいこうという試みの一つです」と話した。


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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