コロナ禍で困窮した学生に国が最大20万円を支給した「学生支援緊急給付金制度」について、朝鮮大学校(東京都小平市)を対象外とした日本政府に対し、国連の人権理事会の特別報告者4人が「差別に相当する可能性がある」と懸念する共同書簡を2月に出した。政府は反論したが、7日にあった集会で同校の学生らは「なぜ私たちはいつも除外されるのか」と訴えた。
給付金は昨年度、コロナ禍の影響でアルバイト収入が激減した学生らに学びを継続してもらうため、政府が対象学生に1人あたり10万~20万円を支給した。文部科学省によると約43万人に支給され、昨年度で制度は終了した。支給対象は大学、大学院、短大、高等専門学校、日本語教育機関、外国の大学の日本校などの学生で、朝鮮大学校などは「高等教育機関であると国が教育内容を直接確認していない」といった理由で除外された。
今年2月に書簡を出したのは国連人権理事会から任命された特別報告者のテンダイ・アチウメ氏ら4人。それぞれ人種差別や教育、移住者、マイノリティーの4分野を担当する。日本政府に対し、制度が同校の学生を差別することを懸念し「マイノリティーの学生が、国民的、民族的、文化的、言語的アイデンティティーを獲得する教育を受けることをさらに危うくする」と批判した。
回答を求められた日本政府は4月、「人種、民族、国籍を利用した差別には相当しない」と反論した。
7日に東京・永田町の参院議員会館であった集会では立憲民主党の国会議員が、同校の学生4人や支援者らを招き、文科省や外務省の各担当者に、書簡を受けた改善策や支援対象外とした理由を説明するよう求めた。外務省の担当者は「特別報告者の見解は国連の見解ではない。法的拘束力もない」などと答え、文科省の担当者も差別には当たらないと繰り返した。
一方、集会に参加した朝鮮大学校4年の康明淑(カンミョンスク)さん(21)は「コロナ禍でバイトは減り、実際に(学校を)辞めたり悩んだりする学生はおり、給付金があればと考えてしまう。当たり前の平等を」と訴えた。オンラインで参加した板垣竜太・同志社大教授(朝鮮近現代社会史)は「今回の排除は一連の朝鮮学校への攻撃や排除の延長線上にあり、(対象外とする)結論が先に決められ、理由はあとづけされた」と批判した。(伊藤和行)
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〈朝鮮大学校〉 戦前の植民地政策によって日本に残留した朝鮮人やその子孫らが学ぶ最高学府として、1956年に創立。学校教育法の「各種学校」として東京都が設置を認可する。現在は8学部あり約600人の学生が学ぶ。民族教育を重視し、主に朝鮮語で授業を行っている。卒業生には、サッカーのJリーグやラグビーのトップリーグで活躍するスポーツ選手や、作家なども多い。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル