在日コリアンの生徒が通う東京朝鮮中高級学校の美術部員たちの姿を描いた連載「いま子どもたちは 等身大のキャンバス」を、3回掲載しました。連載で書き尽くせなかったことや、読者から寄せられた反響の一部を紹介します。(宮崎亮)
いま子どもたちは:等身大のキャンバス【番外編】
10月下旬、初めての取材で学校を訪れた。美術室のドアをあけると、女子生徒が後ろに手を組んで立っている。それを囲み、5人の生徒たちが画用紙に向かって鉛筆を走らせていた。
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やがて画用紙を床に置き、互いに講評する。校外では日本語を話す生徒たちも校内では朝鮮語が基本。しかし、こうした時間や雑談のとき、会話が盛り上がると日本語も混じる。
例えば日本語で取材に応じてくれた高級部3年の宋泰碩(ソン・テソ)さん(18)が、照れながら周りの後輩に言った。「ナァ(私)はこういう人間インミダ(です)なあ」。朝鮮語と日本語のミックス、いわば「在日語」だ。
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部員の中高生9人の話を一人ずつ時間をかけて聞いた。作品の発想の面白さもさることながら、自らについて語る言葉の豊かさと的確さに驚かされた。
展示ごとに来場者にプレゼンを繰り返してきたのも理由の一つだろうが、それだけではないと感じた。
生徒たちは幼い頃から在日という自らのアイデンティティーと向き合ってきた。高級部1年の金秀龍(キン・スリョン)さん(16)はこう語った。「朝鮮人としての誇りを持って生きていこうとは強く思ってます。でもそれは自分の人生の舞台設定というだけで、自分は自分という人間として生まれた。これからも自分は自分として歩みたいです」
連載で描きたかったのは総体としての「朝鮮学校生」「在日」ではなく、生徒一人ひとりの物語だ。どんな漫画やアニメが好きで、何に悩み、どんな進路を考えているか。もちろんルーツのことも尋ねた。尹太吉(ユン・テギル)校長(62)も「美化したりせず、生徒たちのありのままの姿を書いてください」と声をかけてくれた。
投書「親しみ持つ人増えた」「知人が朝鮮学校に誤解」
多くの読者が朝日新聞や学校に、連載記事への感想を寄せてくれた。
週に1回、韓国語教室に通う女性(62)の朝日新聞への投書には「ヘイトスピーチの報道がある一方、韓国に親しみを持ち言葉を学ぶ若者・年配者が増えていると思います」「この親しみを持つ大勢の人たちがヘイト問題を粉砕する原動力になるのでは」とあった。
大阪市の会社員、丸島徳子さん(55)は、朝鮮学校について知人が誤解していると投書した。「ある方の解釈は朝鮮学校には北朝鮮籍の人だけが在籍してると云うのです」
たしかにSNSなどで同じような誤解をみかけるが、日本在住者に「北朝鮮籍」の人はいない。かつて日本の植民地だった南北分断前の朝鮮から渡日した人は、1952年のサンフランシスコ講和条約の発効で日本籍を失い、「朝鮮籍」となった。彼らやその子孫にはその後、韓国や日本の国籍を取る人と、朝鮮籍のままの人がいる。「朝鮮」は北朝鮮や韓国という国家ではなく「地域」扱いのため、朝鮮籍者は無国籍状態にある。
朝鮮学校には朝鮮籍、韓国籍、日本籍、それ以外の生徒もいる。女性の投書はこう続けた。「多様な人が在籍されてる様子です。多数の人がこのことを知ってほしいです」
在日3世のデザイナー、徐仁珠(ソ・インジュ)さん(39)はクラウドファンディング(CF)で来年1月の美術部展を支援。サイト上で「近頃のウリハッキョ(私たちの学校)の学生達の賢さ、誠実さ、自分の置かれている状況の把握力、表現の秀逸さ。本当に感動するほどです」とメッセージを寄せた。
今夏はコロナ禍で、全国の朝鮮学校美術部の合同合宿と「在日朝鮮学生美術展」が中止に。そこで生徒、教師らは「Web展」と実物の作品が全国を巡る「10号展」を企画した。これらのCF(https://camp-fire.jp/projects/view/325552
ハングルで手紙「埼玉の田舎のおばさんは応援してます」
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「私は韓国語を勉強してもう20年になりますが、まだまだです。この手紙も間違いがたくさんあるかと思います。申し訳ありません」。埼玉県羽生市の主婦、吉田早苗さん(69)は、学校に宛てた手紙にハングル文字でこう書いた。「在日朝鮮人として長く日本で生きた歴史を背負う学生の皆さんの姿がまぶしく思えました。自由に面白く、楽しく学校生活を過ごすことを願います」
そして、こう続けた。
「差別や中傷など、日本の人の狭い心が、私はつらいです。元来、朝鮮と日本は兄弟姉妹です。ある時は兄(姉)となり、ある時は弟(妹)です。常に対等な関係です」
「私は朝鮮のすべてを愛しています。美術部だけでなく、すべての皆さん熱心に勉強して下さい。埼玉県の田舎のおばさんは応援しています」
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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