高井里佳子
東日本大震災で飼い主とはぐれた迷子犬を引き取り、「サン」と名付けて育てた京都の喫茶店主が、その思い出を絵本「まいごのサン」(北斗書房)として出版した。サンがこの世を去って3年。本当の飼い主は誰だったのか。さがして伝えたいことがある。
店主は京都市中京区の佐藤研二さん(70)。2011年3月の東日本大震災で飼い主とはぐれたペットが多いと知り、「何とかしたい」と思った。同年8月、宮城県富谷市の被災動物保護センターで出会ったのがサンだ。
小麦色の雑種犬で、当時、推定7歳ぐらい。自分にとって息子や太陽のような存在になれば、とサンと名付けた。サンの人気のおかげで店はにぎわい、本当の店名は別にあったのに、常連客は「サンの店」と呼ぶようになった。
ただ、佐藤さんは元の飼い主のことが気がかりだった。被災地を訪ね歩いたが手がかりはつかめず、サンは19年8月、体調を崩して息を引き取った。
絵本は昨年2月に出版した。被災地に贈ると、有力な情報も寄せられ、「希望が見えてきた」と佐藤さんは言う。「サンは京都で楽しく生きたよ」。元の飼い主に伝えられる日を心待ちにしている。(高井里佳子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル