第二次世界大戦中にナチス・ドイツから迫害を受けた多くのユダヤ人を救った「命のビザ」で知られる外交官、杉原千畝(ちうね、1900~86年)。近年、ビザを発給したバルト三国・リトアニアにある「杉原記念館」の来館者数が増えている。旅行サイトで高い評価を受けていることが追い風になっているとみられ、杉原について知らなかった欧米人らも多く来訪。ドイツがポーランドに侵攻して大戦が勃発してから9月で80年。改めて杉原の功績が見直されている。(江森梓)
リトアニア・カウナスの小高い丘に建つ白い外壁の2階建ての建物。1階の執務室にある机の上には、杉原が発給したビザの複製や黒電話、タイプライターが置かれ、当時の杉原の息づかいが今にも聞こえてきそうだ。
2000年にオープンした「杉原記念館」。もともとは大戦が勃発した1939年に、杉原が当時の首都・カウナスに開設した領事館だった。
杉原はナチスから迫害を受けていたユダヤ人に対して独断でビザを発給し、多くの命を救った。戦後、長らく日本でも杉原の功績は知られなかったが、「功績を広めたい」と考えたリトアニアの実業家らが基金を募って旧領事館を改装し、開館にこぎつけた。
同館では、ビザが発給された歴史的背景や杉原の生涯をまとめたパネル、救われたユダヤ人の証言などの資料を多数展示。杉原の生涯を追ったドキュメンタリービデオも見ることができる。
同館によると、2010年に約5千人だった来館者数は、18年には約2万人にまで増加。日本人が大半を占めるが、近年は欧米人の来館者数も増えているという。杉原についてほとんど知らずに訪れる人も多く、同館は「旅行サイトで高く評価されており、それを見た人が杉原について学ぼうと訪れるのではないか」と分析する。
《杉原の思いやりは多くの命を救った。訪れる価値がある(アメリカから)》《すべての人々にとって必見の博物館(イスラエルから)》《ユダヤ人を救うための彼の努力は驚くべきもので、それを知ることは勇気づけられる(イギリスから)》
旅行サイトには、同館を訪れた人たちからの好意的な書き込みが寄せられている。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース