東京・多摩の水道で高濃度有害物質 井戸のくみ上げ停止



 東京・多摩地区にある一部の浄水所で、水道水から有機フッ素化合物が高濃度で検出されたとして、東京都が昨年6月、水源の井戸からのくみ上げを止めたことがわかった。水源を川の水などに切り替えて濃度を下げたという。専門家は「(検出された値は)すぐ健康に影響が出るものではないが、体内に長く残る」として実態把握の必要性を指摘している。

 都への情報開示請求で公開された文書をもとに取材して判明した。

 検出されたのはペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS(ピーフォス))とペルフルオロオクタン酸(PFOA(ピーフォア))。米国は2016年、飲み水の水質管理の目安となる勧告値を両物質合計で1リットルあたり70ナノグラム(ナノは10億分の1)に設定。1日2リットルを70年飲んでも健康に影響がない値とされる。この勧告値にあたる目標値は国によってばらつきがある。国内に目標値はなく、厚生労働省が今年春をめどに設ける方向で検討している。

 都は、23区を除いた多摩地区(30市町村、一部除く)などで地下水を飲用に使っている。同地区にある浄水所は停止中を含め71カ所で、都は昨年5月以降、過去に濃度が比較的高かった6浄水所で臨時調査を実施。国分寺市にある東恋ケ窪浄水所で両物質合計で1リットルあたり101ナノグラムを検出した。

 都は、米勧告値の半分(35ナノグラム)を超えないよう管理する方針を独自に決め、府中市にある府中武蔵台浄水所(昨年の臨時調査で60ナノグラム)と、国立市にある国立中浄水所(一昨年の調査で38ナノグラム)を加えた3浄水所の水源井戸の一部からくみ上げを止めた。

 3浄水所から配水されているのは数万件。都水道局の担当者は「都民の安心を考え、より慎重に対応している」と話す。

 都は05年ごろから多摩地区で両物質の濃度を調査。記録が残る11~18年度、東恋ケ窪、府中武蔵台の両浄水所では濃度に応じて年に1~12回計測し、各年度の最大値は79~150ナノグラムだった。都は、過去に使われたものが分解されず地下水に残っているとみている。発生源について担当者は「わからない」と話す。

 有害物質を規制する国連の会議に昨年、日本から参加した高月峰夫・早稲田大招聘(しょうへい)研究員は「沖縄を除き、国内でほぼ検出されなくなっていただけに東京の一部の飲み水で高濃度だったとは驚きだ。都のデータの範囲ではすぐ健康に影響が出る値ではない。ただ、過去に各地の工場や空港で使われており、地下水を飲用に使う自治体はしっかり調査したほうがいい」と話す。

 水道統計では、地下水を飲用に使う上水道の事業は全国で約1千ある。厚生労働省によると、両物質については、調査や報告が自治体に義務づけられておらず、同省が検出状況を把握しているのは全国の浄水施設(約6400)の数%にとどまる。

 両物質の健康への影響について世界保健機関(WHO)は評価を定めていない。血液中の総コレステロール値を増やすなどの研究報告がある。PFOAでは米国で数千ナノグラムなど極めて高い濃度の水を飲んだ人たちの健康調査から、精巣がんや腎臓がん、潰瘍(かいよう)性大腸炎など6疾病のリスクを高める可能性があると指摘された。

 両物質は1950年代ごろから…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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