日本人は「東京オリンピック」をどんな気持ちで迎えるのか。
1964年の前回大会を前に行われたアンケートと同じ質問を、57年後の今年、2人の社会心理学者が全国の約1千人に再び投げかけた。前回と今回で政治が似たような五輪開催の「大義」を掲げる一方で、それを受け止める国民の意識は大きく変わったことを、調査結果が浮き彫りにしていた。
調査をしたのは、大阪大の三浦麻子教授と香港城市大の小林哲郎准教授。東京のほか、大阪や北海道などに住む18~70歳を対象に7月14日、オンラインで聞いた。調査では、前回大会を前にした64年6月と10月、NHK放送世論調査所(現・放送文化研究所)が実施したアンケートと同じ内容の質問を盛り込んだ。
今回の調査で、「今度の東京五輪に関心を持っているか」との質問に「非常に関心を持っている」「やや関心を持っている」と答えたのは合わせて51%。計84%だった64年の調査と比べて30ポイントほど減っている。
前回大会でも掲げられた「復興」
関心そのものよりも大きく減ったのは、五輪開催の目的に賛同する人の割合だ。
「今度の五輪は、日本の復興と実力を諸外国に示すうえで大きな意味を持つ」という意見に、64年は92%が賛成した。当時の「復興」が前提としていたのは太平洋戦争での敗戦。その前提が東日本大震災に変わった今回、この意見に賛成した人は31%と大きく減った。「日本の名誉のために、今度の五輪はぜひ立派に成功させなければならない」に賛成する人は前回95%だったが、今回は41%にとどまった。
前回の五輪では国民がこぞって開催に賛同し、当初から高い関心を持って受け入れられていたということなのか。当時の調査結果からは、そう簡単に片付けられない国民の意識も浮かび上がっていた。
五輪の開催に不安を持つ人は、前回大会でも実は少なくありませんでした。記事後半では、57年前の調査を担当した社会学者、藤竹暁さん(88)が当時の記憶を語ります。
例えば、「五輪にたくさんの…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル