新屋絵理
東京医大の不正入試問題をめぐり、被害を受けた受験生らに代わって受験料などの返還を求める裁判を起こしたNPO法人「消費者機構日本」(東京)は27日、同大が約560人の受験生に計約6760万円を支払う和解が東京地裁で成立したと明らかにした。
機構によると、返還されるのは受験料や出願書類の送料などで、1回あたり約4万~約6万5千円。国の認定を受けた消費者団体が被害者の代わりに提訴する「消費者裁判手続き特例法」(2016年施行)に基づく裁判が終結するのは初めてとなった。
消費者団体が受験生に代わって裁判
機構は18年に同大を提訴した。地裁は20年3月の判決で、女子や浪人生の得点を現役男子学生より低く調整したのは憲法の平等原則に反すると指摘。17、18年度に不当に不合格になった受験生に受験料などを返す義務があると認めた。
同大は控訴せず、判決は確定。機構は第2段階として対象の受験生に裁判手続きへの参加を呼びかけ、地裁にまとめて届け出た。同大は支払額を争ったが、地裁の和解案に応じた。受験の事実が確認できなかった4人については、機構が取り下げるなどしたという。
「慰謝料は請求できない」 弁護士が課題を指摘
機構代理人の鈴木敦士弁護士は会見で「被害を回復できた一方で、対象者を把握しきれない、特例法では精神的苦痛への慰謝料請求ができない、などの問題点も浮かび上がった」と指摘した。東京医大は「再発防止を徹底するとともに、適切な入学試験の実施に取り組む」とコメントした。(新屋絵理)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル