日本原子力発電(原電)の東海第二原発(茨城県東海村)について、住民らが原電に運転差し止めを求めた訴訟の判決が18日、水戸地裁であった。前田英子裁判長は、原電に運転差し止めを命じた。
原告は茨城や東京、千葉の首都圏などの住民224人。2012年7月に原電への運転差し止めや、国の設置許可の無効確認などを求めて提訴した。国への訴えは、運転延長が認められた18年に裁判の長期化を避けるために取り下げた。
主な争点の一つが、想定される地震の最大の揺れを示す「基準地震動」の妥当性だった。原発の設計や安全確認の前提になる。11年の東京電力福島第一原発事故後、国が13年に設けた新規制基準では、電力会社がそれまでより厳しい条件で設定するよう規定された。
基準地震動の算定には、過去の地震のデータをもとにした計算式が使われる。原子力規制委員会は、導き出される数値は過去のデータに基づく「平均値」にすぎないとして、平均から上ぶれする「ばらつき」も考慮するよう求めている。原電は、過去に起きた地震などを元に平均値の1・5倍で設定している。
この値について、原告側は、より多くの事例を踏まえて4倍の想定が必要だと主張。原電側は、揺れが敷地に与える影響が大きくなるよう考慮した上で1・5倍に設定したと説明していた。
原電が地震動を予測する際、地震を引き起こす断層を特定する手法が適切かどうかも争われた。原告側は、原電の手法では東日本大震災の揺れを再現できないと主張。原電側は、事例が蓄積された手法で断層を特定しており、原告側が採用すべきだとする手法は、確立したものとは言えないと説明していた。
運転開始から40年超となる東海第二の老朽化の影響の有無も争点だった。原告側はケーブルの防火設備の安全性や、機器や配管の耐震性が不十分だと主張していた。
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〈東海第二原発〉 首都圏にある唯一の商業炉で、半径30キロ圏内に全国最多の94万人が住む。1978年に運転を開始し、東日本大震災による津波被害を受けて現在は停止中。2018年11月に原子力規制委員会が最長20年の運転延長を認め、原電が防潮堤などの安全対策工事を進めている。工事の完了予定は22年12月。再稼働をめぐっては18年3月、立地する東海村に加え、水戸など周辺5市から「実質的な事前了解を得る」とする安全協定が、原電と6市村の間で結ばれた。周辺自治体の同意を条件とするのは全国初で「茨城方式」と呼ばれる。
福島第一原発と同じ沸騰水型炉(BWR)。西日本に多い加圧水型炉(PWR)は震災後に9基が再稼働したのに対し、東日本に多いBWRは1基も動いていない。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル