電機大手、東芝グループの中核事業会社の一つ、東芝デジタルソリューションズ(本社・川崎市)に勤務していたシステムエンジニア(SE)の男性社員(当時30)が2019年11月に自殺したのは長時間の過重労働が原因だったとして、労災が認められたことがわかった。働き方改革関連法が19年4月に施行され、大企業の残業時間について罰則付き上限規制が適用されたにもかかわらず、大企業で長時間労働による社員の過労自殺が明らかになった。
亡くなったのは、入社5年目だった安部真生(しんは)さん。19年11月16日、横浜市内の自宅マンションで自ら命を絶った。交際相手に「仕事が大変だ」などと漏らしていた。川崎南労働基準監督署(川崎市)が昨年12月17日付で労災認定した。
東芝側が遺族側に示した報告書は、システムの開発に遅れが生じたため、19年10月以降に安部さんに作業が集中し、過重な負担がかかったとしている。
遺族側代理人によると、亡くなる直前の1カ月(10月17日~11月15日)の時間外労働は103時間56分にのぼった。3、4、6カ月前の各月でも過労死ラインの80時間を超えていた。大企業の残業時間には、19年4月以降、休日労働を含めて「月100時間」の上限が設けられた。
安部さんは東大大学院農学生命科学研究科を修了後、15年4月に東芝ソリューション(現東芝デジタルソリューションズ)に入社。19年6月ごろから厚生労働省老健局が発注した介護に関するシステムの開発に従事していた。
東芝は17年に純粋持ち株会社に移行し、東芝デジタルソリューションズなど100%出資の4社を中核事業会社として傘下に置いた。東芝デジタルソリューションズの社長は現在、東芝本体の執行役上席常務が兼務している。東芝側は労災認定の事実を認め、「極めて重く受け止めており、故人のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族に誠心誠意対応する。社員の心身の健康維持増進に一層努めていく」などとするコメントを出した。
遺族側代理人の弁護士は、東芝側が開示した安部さんの業務上のメールや関係資料を調べた結果、東芝側に労務管理上の問題があっただけでなく、安部さんが発注元の厚労省との協議の場などで精神的ストレスを受けていたことがうかがえるとして、厚労省からも話を聞く方針だ。(専門記者・木村裕明)
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東芝デジタルソリューションズのコメント 当社として、今回の件について極めて重く受け止めており、改めまして故人のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆さまに対して誠心誠意対応していく所存です。
当社はこれまでご遺族の労災申請にあたって可能な限りご協力をさせていただき、行政官庁(労働基準監督署)の調査にも真摯(しんし)に対応してまいりました。また、ご遺族対応を継続して行っているところであるため、詳細についてはお答えしかねますが、今回の事態を受け、安全健康に関するトップメッセージを繰り返し発信するとともに、働きすぎ防止、職場内でのコミュニケーション活性化などの施策に加え、社員個人のセルフケア向上施策にも取り組んでおり、社員の心身の健康維持増進に一層努めてまいります。
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・悩んでいる人は、こころの健康相談統一ダイヤル(0570・064・556)へ。
・労働問題に関するご意見や情報をkeizai@asahi.com
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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